ダブルフライ・アートセンター

PEOPLEText: Hiromi Nomoto

楽しそうに “イタズラ” を創作している彼らだが、近頃では多くの展示に招待されたり、個展を行っている。それらを紹介しよう。

2011年の北京の工人体育館西側にあるギャラリー・ホテルタン・コンテンポラリー・アートの共同アートプロジェクトに参加。作品を設置するだけのアーティストもいたが、ダブルフライのメンバーたちは、ギャラリー・ホテルに滞在し作品をつくった。その様子は彼らのウェイボー(中国のマイクロブログ)上で紹介していた。相変わらずめちゃくちゃな様子で、映像は既に消されてしまった。バスタブに大量の牛乳を張り、肌の張りと美白効果を狙った「牛乳純愛」風呂は、一晩5万中国元という豪華な部屋にはまさにぴったりだ。

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ギャラリー・ホテル・アート・プロジェクトの様子

中国の若手アーティスト90名以上を集め、中中央美術学院美術館で行われた巨大グループ展示「未来展」へも参加した。中国の重要なアーティストの一人で中央美術学院校長でもあるシュー・ビンとグッゲンハイム美術館のシニアキュレーターのアレクサンドラ・モンロー、中国屈指のキュレーターで美術評論家のフォン・ボーイーらがキュレーション委員を務めた。アーティストの選出は、大声展のキュレーションを行った若きキュレーターのフー・シャオドンら、アーティストや美術大学教授、美術館館長など80名で行われた。多くの作品の中でもダブルフライは浮いた存在で、この展示の講演会に参加した森ミュージアム館長の南條氏は『これほどまでに意味をなさない作品は、若くなければつくり出せないだろう。私はこれらの中で彼らの作品を一番に推薦する』と語った。

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「Double-Fly, The Way to Go! – Sounds like a Real Name」の展示風景 撮影:Hiromi Nomoto

2012年末から2013年初めにかけての展示「Double-Fly, The Way to Go! – Sounds like a Real Name」では、来場者は168元を払うとクジを1枚引け、少なくとも作品1点が当たる。中には10点も貰えるくじや、3回引く権利が貰えるくじ、100元更にプラスすると額装した作品を貰うことができるなどだ。ダブルフライらしい展示である。ゲーム的要素のある展示だが、展示会場ではメンバーたちは真剣な表情で、オープニングに集まった人々の様子を伺っていた。

彼らの作品は、他のどんなアーティストたちとのグループ展でも、馴染んで調和などできずにいつも浮いている。言葉で彼らの作品をどう表現していいのかは分からない。彼らの作品は地球を救ったりはしないし、社会問題を扱っている訳でも、何でもない。一見するとお笑い作品、ほとんど只のイタズラで、もしかしたら作者がアーティストであるということ以外アートとは関係が無いのかもしれない。私にとっての彼らの作品の魅力とは、そういったところにある。何の脈絡も無く思われる彼らの作品も実は、これら中国アートの流れの中で重要な存在なのだろう。しかし彼らの作品は、あれこれと頭で考えるよりも先に、何故か人々に受け入れられてしまうのだ。

私はダブルフライが思考の重点を置いた作品に移行していくのは、少し寂しく感じられます。

そうかもしれませんね。ですが、ダブルフライがとても真面目になって、そのせいでものすごく寂しい感じになったとしたら、それは結構面白いかもしれません。そうでしょ?

Text: Hiromi Nomoto

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