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第9回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

また、アニメーションの短編で大賞を取った榊原澄人の「浮楼」はさすがに秀逸な作品であったが、橋本大佑の「Flowery」もシンプルなアイディアながら、観ている者を強くひきつける作品であった。


「Flowery」橋本大佑

最後に、このフェスティバルの部門の中で、個人的には一番好きなマンガ部門にふれておこう。一通り面白いといわれているマンガには目を通しているのだが、さすがにマンガ大国日本ということだけあって雨後のたけのこのごとく日々生産されるマンガの中から良い作品だけを確認できるはずもなく、こういったフェスティバルで選出された作品のなかに未知のマンガがあり、出会えるのは非常にうれしい事であり、またメディア・アートの展示では数少ないマンガを取り上げるているこのフェスティバルのユニークさの一つであろう。

とりわけ、印象に残った作品は、近未来SF、女の子、戦争(戦闘)というベタな設定(パトレイバーを思い出す)ながら一風かわった作品となっている福島聡の「機動旅団八福神」。大国間の思惑や、脅威に晒される近未来日本を舞台にしており、現代日本の状況がだぶって見えるのは決して新しい内容だと思えないが、その語り口はどこか古新しい感触があり、それが画とあいまってどこか奇妙なマンガであった。


「機動旅団八福神」福島 聡 © 福島 聡/エンターブレイン

以上、幾つかの作品についてふれたが、全部門をあわせた展示点数は180作品以上にのぼり多くの素晴らしい作品に出会った。メディア・アートの展示にありがちな難解さはあまりなく、比較的多くの人々に受け入れやすい内容の充実した文化庁メディア芸術祭、10回目を迎える来年は節目の年となるだけにどのような内容となるかと期待すると同時に、われわれも10年前とは比較にならないほど身近になったこのメディアアートという分野をもう一度見直すいい機会なのではないだろうか。

平成17年度 [第9回] 文化庁メディア芸術祭
会期:2006年2月24〜3月5日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
入場無料
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・CG-ARTS協会)
TEL:03-3535-3501(CG-ARTS協会内 文化庁メディア芸術祭事務局)
https://plaza.bunka.go.jp/festival/

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: PAS Photography

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