NIKE 公式オンラインストア

第12回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Masanori Sugiura

第12回文化庁メディア芸術祭が国立新美術館で開かれている。「メディア芸術とはなに?」という議論は常に行われてきた。一方で、技術の発達とそれを利用する人々の変化により、静止画、映像、インスタレーション、アニメーション、アート、マンガなど多種多様な表現の作品がメディア芸術に含まれるようになった。

メディア芸術というフィールドは、常に変化が起こるバトルフィールドのようなもので、新しい表現手法を手にしたアーティストやデザイナーによって日々斬新なメディアの使い方が追求されている。文化庁メディア芸術祭も、対象を「メディア芸術」としてくくることで、多種多様な作品を一堂に捉えることができ、僕たちのアートやメディア、そしてコミュニケーションに対する認識を高める機会を与えてくれている。

第12回文化庁メディア芸術祭
マンガ部門

今年度の文化庁メディア芸術祭に応募された作品数は過去最高の2,146作品。日本を含む44の国と地域からの応募があった。その中からアート、エンターテイメント、アニメーション、マンガと全4部門に分けて大賞、優秀賞が選定され、国立新美術館にある会場では受賞作品をはじめとした作品が展示・上映されている。会場では作品を実際に手に取って読んだり、操作して体験することもできる。

第12回文化庁メディア芸術祭
「levelHead」Julian OLIVER

アート部門で優秀賞を受賞した田口行弘の作品、「Moment – performatives spazieren」は、ギャラリーの床に敷き詰められた板が、街を生き物のように変化し動き続けていく様子を描いたストップモーション・アニメーション作品。数千枚の画像によって構成されるアニメーションの中で、一人でに動き続ける板を見るのはとてもおもしろい。

第12回文化庁メディア芸術祭
「Moment – performatives spazieren」田口行弘

動くものだからビデオカメラで撮影するという視点ではなく、ドキュメンテーションをする上でテクノロジーの価値をどう活かし作品として具現化させるのかということを念頭に置いたからこそ着地することのできた視点を持った作品だと思う。もちろん、作品からは田口のユーモアのセンスも感じ取ることができた。

第12回文化庁メディア芸術祭
「Carbon Footprint」Matt Chandler

エンターテイメント部門で優秀賞を受賞したイギリス生まれの、マット・チャンドラーの映像作品、「Carbon Footprint」は、道端に捨てられた空き缶が50年の歳月をかけて徐々に腐食し風化していく様子を精妙なCG技術で描写した作品だ。「一つの缶が風化するまでに50年かかる。」というシンプルなメッセージと一緒にリアリズムを追求した精妙な映像が見終わった後も深く脳裏に焼き付けられる力のある作品だった。

今年度のメディア芸術祭では、日本人以外の作品も多数受賞作品として会場に展示されている。会場内で海外のメディア芸術関連のフェスティバルを紹介する「Media Art in the World」なども同時開催されているので、世界各地のメディア・アートへの関心の高さを垣間みることができる。

今年で第12回目を迎えたメディア芸術祭。世界は経済市場の混乱や環境問題など多くの問題を抱えている。しかしテクノロジーの発達とそれを利用するアーティストやデザイナーをはじめとした自分たちは、多種多様なメディアを使って言いたいことを伝えたり、社会で起こっていることを自分なりの言葉で伝えることもできる。

メディアは使う人がいてはじめて成立する。年々メディア芸術祭に応募される作品数が増えていることも、メディア芸術により具現化できる未来への可能性を追求する人々が増えていることを実証するものだと思う。

メディア芸術祭は、今どんなメディアがどのように使われていて、またこれからどんなメディアが生まれてくるのかを考えるきっかけを与えてくれる展示として見ることができる。開催期間は2月4日(水)から15日(日)までという僅か11日間。是非足を運んでもらいたい。

第12回 文化庁メディア芸術祭
会期:2009年2月4日〜15日(休館:2月10日)
時間:10:00〜18:00(金曜日は20時まで)
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
主催:文化庁・国立新美術館・CG-ARTS協会
入場無料
http://plaza.bunka.go.jp/festival/

Text: Masanori Sugiura
Photos: Masanori Sugiura

[Help wanted] Inviting volunteer staff / pro bono for contribution and translation. Please e-mail to us.
ボール・ピヤラック
MoMA STORE