第17回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Noriko Yamakoshi

文化庁メディア芸術祭が今年も開幕した。1997年の開始から17回目の開催となるこのメディア芸術総合フェスティバルは本年度も応募総数記録を更新、世界中から過去最多となる84の国と地域から、計4,347作品が寄せられた。アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門に分けられ募集された作品群から各部門毎に大賞、優秀賞、新人賞、審査委員会推薦作品が選ばれ、国立新美術館を主要会場に、東京ミッドタウン、シネマート六本木等全4ヶ所で展示・上映・トークイベントなどが開催されている。

第17回 文化庁メディア芸術祭
入り口をくぐり、受付を左手に右へ曲がると仕切りの無い開けた展示会場が広がる。

2,400点を超えるアート部門作品群の中から大賞に選ばれたのはカールステン・ニコライ(ドイツ)。「ジュッ、ジュッ」と不思議な音を送り出しているブースの中では、壁に設えた4つのネオン管の光りに照らし出されながら巨大な2本の振り子が行ったり来たりしている。磁石を先端に付け天井から吊り下げられた振り子の下には画面を上に設置されたテレビモニター。その画面には壁のネオン管が映し出され、振り子が上を通り過ぎる度にそのイメージはまるで波紋のように揺らいでゆく。画面横には電磁波を分析し音へと変換するアンテナが設置され、歪みを創りだす度に電磁波は知覚可能な「音」として観客へと伝わってゆく。内省的な佇まいで、本来「見る」ことも「聴く」事もできないエネルギーの可視化を可能にした作品だ。

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カールステン・ニコライ「crt mgn」展示風景

この作品はビデオアートのパイオニア、ナム・ジュン・パイクが亡くなった翌年、東京・ワタリウム美術館で開催された自身の個展を機にパイクへのオマージュも込めて制作されたもの。ビジュアルアートと実験音楽を横断し、ジャンルを超えた総合芸術で世界の美術館や国際展で活躍している彼が大賞を受賞するのは当然との向きもあるかも知れないが、本作はメディアアートの歴史をも踏襲した傑作として選出されたという。

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阿部修也 展示風景
ニコライの展示ブースの向かいにはそのパイクのエンジニアとして数々の作品をコラボレーションし、功労賞の一人に選ばれた阿部修也の作品が展示されている。

『パイクと初めて出会ったのはまだ彼が存命の時、ニューヨークのオープニングにおいてだった。当時私はまだ彼の初期の作品に詳しくなかったけれど、音楽におけるシンセサイザーのようにビデオシンセサイザーという画期的な世界を創った人だ』(「アートがもたらす世界の捉え方 01~アートから世界を知覚する」トークより)

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