田名網敬一 記憶の冒険
HAPPENINGText: Alma Reyes
コロナ禍は田名網の作品制作にも変化を及ぼした。田名網は空白の時間を埋めるように、以前から好んでいたピカソの絵画「母子像」を模写することを始める。そして、ピカソの母子像をフォーマットに様々なモチーフを組み合わせ、500点以上の「ピカソ母子像の悦楽」シリーズ(2020-2023年)を制作した。来場者の視線は、壁から壁へ、そして本や絵画、その他のメディアを収めた人目を引くネオン照明のニューススタンド型インスタレーション《Kiosk Picasso》(2022年)の周囲へと、熱を帯びて巡る。
第9章「ピカソの悦楽」展示風景 Photo: Alma Reyes
第10章「
第10章「
金魚は田名網が繰り返し用いるモチーフのひとつだ。戦時中、爆撃の光に乱反射しながら水槽を泳ぐ祖父の飼っていた畸形の金魚。田名網の戦争体験は、特にこの金魚の存在によって、神秘的な幻想性をもって記憶される。その後2000年代には、ヒラヒラとミニスカートを振らして奇抜な服装で渋谷を徘徊する少女たちの姿を金魚に見立てた作品を発表した。巨大な壁画《彼岸の空間と此岸の空間》(2017年)や《死と再生のドラマ》(2019年)も、田名網の幼少期の記憶と強く結びついたモチーフの数々から構成されている。田名網にとって、死の
「田名網キャビネット」展示風景 Photo: Alma Reyes
最後に、マリークヮント、バービー、アディダスなど、田名網がブランドとコラボレーションしたプロジェクト作品の数々がガラスキャビネットに収められている。衣服、バッグ、本、レコード、コップ、おもちゃ、あらゆる種類のアイテムが、この驚異的なアーティストの人生の冒険の儚い記念品として並んでいる。
田名網敬一 記憶の冒険
会期:2024年8月7日(水)~ 11月11日(月)
開館時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:火曜日
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
主催:国立新美術館、朝日新聞社、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
協力:NANZUKA
観覧料:一般2,000円、大学生1,400円、高校生1,000円
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.nact.jp
Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado