末次弘明
PEOPLEText: Aya Shomura
ご出身は九州ですが、北海道に移り住んだことは、作品にも影響を与えていますか?
それは間違いなく大きいです。北海道にいなかったら現在の作品はもちろん生まれていないし、全く別のものになっていたと思います。もしかすると制作もしなかったかもしれません。導かれるように北海道に来たのだと思っています。移住当時、絵画の制作では、山の稜線や空、雲、海に広がる水平線などをモチーフにしていましたので、雄大な自然が広がる北海道で、それをモチーフに制作しなくては、と思っていました。ところが、いざ来てみると、雄大な自然よりも先に、手に収まるような小さな自然物に大きく心を動かされました。身近にあった、等身大の自然が、僕に何かを語りかけているような気がしました。そのギャップに心を掴まれてしまった感じです。また、北海道では素晴らしい人達と出会うことができました。現在も様々な人との素敵な出会いがあります。北海道の人は自由で温かい。その人達との交流がパワーとなって今を過ごせていると思います。
“Kristallnacht”, PORTO Gallery, Sapporo, Woods and India ink, 2013, Photo: Hiroaki Suetsugu
大学でも教鞭を取っていらっしゃり、学生の皆さんにも様々な経験と体験の機会を設けているという印象を強く受けます。どんなことを感じとって欲しいとお思いですか?
そうですね、僕もそうでしたが、学生時代にしか味わえない感覚があると思います。同じものでも見え方が違ったり。勉強も大切ですが、それ以上にいろんなことに挑戦し、体験することが大切だと思います。石膏デッサンでも、同じところに座って見るだけでは正確な形がわからないように、立ち上がって、いろんな角度から見て、触って初めて形が少しだけ理解できる。頭だけではなく体全てで経験することが学びにつながると思います。私の研究室は看板に「現代美術」とありますが、何もイメージほど難しいことはなく、表現する人間としての在り方を、手探りで探していくところです。とてもアナログです。表現について探求を進めることももちろんですが、芸術が持つ素晴らしさや面白さを、自分なりのやり方で人に伝えることができるようになって欲しいですね。
Production scene of “Really really love it!!!”, CowParade Niseko, Niseko, 2015, Photo: Hiroaki Suetsugu
今、興味・関心のあることを教えて下さい。
やっぱり自然現象に関心があります。特に、最近天気予報でも映像を見ることができる「ひまわり8号」ですね。これまでのものと違い、雲の動きがヌルヌルとして、見ていてとても面白い。来年、ひまわり9号が打ち上げられる予定ですが、どんな最新機器で情報を送ってくれるのかが今から楽しみです。あとは、北海道に初めて来た当時に比べても、明らかに気候が変化しています。これも見守っていきたいですね。そのうち雪が降らなくなるかも?
“Really really love it!!!”, CowParade Niseko, Niseko, 2015
10月1日まで開催されている「カウパレード・ニセコ」では、選出作家としても参加されています。どのような作品でしょうか?
はい、タイトルが「Really really love it!!!」といいます。「カウ」と呼ばれるFRP樹脂でできた原寸大の牛の模型全面に、牧草を描いた作品です。牛はおそらく牧草が大好きで、牧草を食べることで生きている。そんな状況を作品にしました。カウの曲面の上に、垂直の牧草を描いたので、角度によって面白い見え方をします。この夏、秋はいろんな作家さんによる、47体もの楽しいカウたちに会いに、是非ニセコへお越しください!
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