大黒淳一「音の彫刻展」
HAPPENINGText: Mariko Takei
CAI02への地下への階段を降りてすぐに、心地よい鳥のさえずりが聞こえてくる。その鳥の鳴声に誘われるように向かった先は、3月6日よりCAI02で開催中の大黒淳一による「音の彫刻展」の展示空間だ。
札幌を拠点に国内外で活躍するサウンドメディアアーティストの大黒氏は、今回自身初となる個展を開催し、人の耳には聞こえない周波数の音と、自身が制作した音を組合わせ、特殊なスピーカーを用いて、見えない音の線で空間を創りだすサウンドインスタレーションを披露している。
インスタレーションが展示されている空間は、3つの異なる展示要素で構成。まずは、低い周波数の振動音を使った作品2つ。天井から伸びる紐4本で繋がれているスピーカーの作品「Phase +/−」。振動音がスピーカーを通じ、縦に伸びる紐に伝わりわずかに振動しているのを見ることができる。そして、その「Phase +/−」の周りを囲むかのように両サイドに2つずつ展示されているのが、「Sound shadow」。その名の通り、音の振動が鏡に反響し、わずかに動く反射した光の影が壁に投影されるというもの。この2つの展示では、まるで音に生命が宿ったかのように、音の揺らぎを目にすることができる。
Sound shadow. Photo: Yoshisato Komaki
そして、空間を構成するもう一つの展示は、特殊なスピーカーを使用し、レーザー光線のように音が線で発せられ音のカタチを感じることのできる作品「Sonic line」。フィールドレコーディングで撮ったやさしい鳥の鳴声が聴覚を刺激し、異空間へ誘うようなこの作品だ。特殊なスピーカーが埋め込まれた薄い四角いパネルが天井からぶら下がったもので、大黒氏自身が小樽やヨーロッパでフィールドレコーディングしたというミックス音がピンポイントで聴こえてくる。パネルの向きが変わることで音の到達点も移動し、更に見ている人の動きにより音の聞こえる場所も変化していくという作品だ。
これまでは、ライブやコンサートなど一時的な空間で音楽活動を発表してきた大黒氏。「音をカタチで表現する」という展覧会のアイディアは、長年温めてきたそうだ。こうした音楽活動の他に、CD制作やマルボロ、プレイステーション3などの海外CM音楽を手掛けるなど、コマーシャルワークも手掛けている。もともと、音に目覚めたのは、幼少時からという大黒氏は、幼稚園の頃から自らの意思でエレクトーンを習い、中学や高校ではバンドを組んで音楽活動をするなど、ずっと音楽と共に成長してきた。大黒氏の音との関わりについて、展覧会の準備中の大黒氏に少し話しを伺った。
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