「反解釈の否定:無題」展
展覧会を通して、それぞれの作品の意味に関する疑問はふたつの道筋へと進んでいく。ひとつは直感的な解釈であるが、もうひとつは、アーティストの世界からの隔たり、そしてそれゆえ異なり得る世界観の認識に対してより意識的である。これら意味と解釈からなる多様な層は、作品自体にテキストを含むチェオ・チャイ・ヒエンの作品で更に明らかになる。
Cheo Chai-Hiang, Untitled, (Miles To Go Before I Sleep), 1987
丸太に取り付けられた昔ながらの洗濯板が開けば、ロバート・フロストの詩「雪の夕べ森のそばにたたずんで」の最後の一節を示す。加えられた文章は、作品自体への分析を可能にし、そして解釈の複雑さと多面的な性質を強調する。
しかし、本展覧会で一番重視されるのが鑑賞する者の視線であっても、思惑と意味が選び出される集合的な意識の存在が薄れることはない。アンジェリン・チューの無題の作品は、彼女が家族と過ごす穏やかな人生の一瞬をとらえたもので、乱雑に絡まったハンガーと下着が壁に対して影の網を織りなしている。
Angeline Choo, Untitled, 1988
これはシンガポールに生活する者たちから笑顔を引き出す光景であろう。壊れた窓の外に引っ掛けられた竹竿から垂れる洗濯物。公共の場で遊ぶ腕白な子供たちの興味を引き嘲笑の対象とされてしまった、不運な住人のレースの下着。そんなものが登場する記憶のひとつやふたつを思い起こさせるかもしれない。
Exhibition view
「反解釈の否定」は、アート鑑賞の経験に良い刺激を与えてくれる。心地よい場所から追い出され、それぞれのアート作品の理解を明らかにするために自分自身の経験を掘り下げなければならない。鑑賞する者は、個々の意識に与える社会的な力の影響を身をもって感じ、解釈と意味の多様性に向き合うのである。
Not Against Interpretation: Untitled
会期:2013年7月20日(土)~2014年4月27日(日)
時間:10:00~19:00(金曜日21:00まで)
会場:Singapore Art Museum
住所:71 Bras Basah Road, Singapore 189555
入場料:大人$10、外国人学生、60歳以上$5
TEL:+65 6332 3222
https://www.singaporeartmuseum.sg
Text: Rachel Alexis Xu
Translation: Satoko Shimokawabe
Photos: Rachel Alexis Xu