SMAL国際会議「デジタルの裏庭」
HAPPENINGText: Magdalena Taube
誰でも、プロシューマー(生産を包括する活動的な消費者)になることができる。それに加えて、活動的な消費者は新製品、コンテント、さらにもっと多くを生成することができる。「我々が行う:消費者生成コンテントの潮流」と題されたワークショップでは、デヴィッド・リンゼイ・ライト(クイーンズランド工科大学)がモデレーターとなり、須之内元洋(札幌市立大学)、迎山和司(はこだて未来大学)、福浦友香(オタク文化研究者)、吉村匠(北海道フード特区機構)、伊藤博之(クリプトン・フューチャーメディア代表)という一連が集まった。
いわゆる「消費者/ユーザ作成コンテント」は、大量消費で作られ、標準化されたコンテントや製品を、容易に凌ぐ品質をもっている。そこでは、より個人的で、複数の個による多量でユニークな生産が行われ、大量消費からの代替に興味を持っている人々に提供される。
この新しいプロシューマー文化のひとつの例は、日本のポップ・アイドル初音ミクだ。初音ミクは、実在の人物ではなくクリプトン・フーチャ―メディアによって開発された女性ペルソナのボーカロイド。伊藤博之は、初音ミクの成功がどのようにしてユーザの参与性や意思決定に関連したかを説明した。オリジナルのソフトウェアは専有著作物だ。しかし、付加されるソフトウェアはオープン・ソースだ。誰でも、ミクのための歌を作曲し、彼女に歌ってもらうことができる。
全ての背景の中で、イノベーションは、必ずしもそれを必要としていない人々によって引き起こされる。代わりに、彼らは専門家や商業的関心とは異なる、彼ら自身の情熱に従うのだ。あるいは、彼らは破局的な状態にいて、非標準的なソリューションを開発することで大きな問題に対処しようとする。
会議で、私たちはこの種のイノベーションのための用語を造った。「静かなイノベーション」。伊藤穣一(MITメディア・ラボ所長)は、キーノート・スピーチの中で述べたように、このイノベーションの発現と開発には、ほとんどノイズがない。それは、支配的な産業のデジタルの裏庭で、むしろさりげなく起こることなのだ。
この静かなプロセスを、札幌に降る雪と比べてみることもできた。ひとひらの雪は、私たちが暮らしている環境を変化させるのだ。
SMAL国際会議「デジタルの裏庭」
会期:2013年1月10日(木)〜12日(土)
会場:北方圏学術情報センター(PORTO)1Fホール
住所:札幌市中央区南1条西22丁目
TEL:011-622-5110(札幌メディア・アーツ・ラボ事務局)
https://www.smal.jp
Text: Magdalena Taube
Translation: Mitsuhiro Takemura
Photos: Yasuhiro Yamaguchi, Chris Piallat, Krystian Woznicki