第54回 ヴェネツィア・ビエンナーレ

HAPPENINGText: Toshiaki Hozumi

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イギリス館(Mike Nelson)

館内に入る長い列が会期中途切れ目なくつづいたイギリス館では、マイク・ネルソンが、東西の貿易を象徴する、17世紀のイスタンブールの隊商宿を迷路のように館内に再現した。様々に置かれた道具や写真類などがこの宿の住民や歴史を不気味に連想させる。これもかつて大英帝国として、世界中と交易や争いを繰り返してきた象徴とも読める。

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ポーランド館(Yael Bartana)

国の状況を、大きな問題に焦点を当て、最もストレートにあらわしてきたのは、ポーランド館とエジプト館。イスラエル出身のヤエル・バエタナを代表に選出し、追放されたユダヤ教徒にポーランドへの帰還を呼びかけるという、フィクションとしてのポーランド・ユダヤ新生運動(JRMiP)を3部作のストーリー仕立てで見せている。アートでありながらも、同時にプロパガンダとしても機能するポリティカルな作品は、フェミニズムアートを中心に90年代にも多くつくられたが、さらに現実的で切迫感を伴い衝撃的である。アムステルダム在住のこの作家を代表として選ぶポーランドの姿勢にも感心させられる。

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エジプト館(Ahmid Basiouny)

また、エジプト館では、2011年1月の「怒りの金曜日」で亡くなったアハメド・バショーニーを選出し、ギャラリーの中で30日間走るという彼のパフォーマンス映像と、死の直前に撮影したと言われるデモの映像を、美術家によるキュレーションにより、6枚のスクリーンでミックスして上映している。これもつい先頃の出来事だけに衝撃的な展示だった。

このように、自国の問題を直截に見せる作品が、各国パビリオンで紹介されていたのも、今回のヴェネツィア・ビエンナーレの特長であり、見ごたえのある部分であった。

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