第50回 ヴェネツィア・ビエンナーレ
HAPPENINGText: Simone Biffi
2年に1度、水の都ヴェネツィアで開催される国際的な現代アートの祭典、ヴェネツィア・ビエンナーレ。「夢と衝突」というテーマの下開催されている記念すべき第50回目のビエンナーレ。アルセナーや、ジャルディーニ公園およびレコッレール博物館などヴェネツィア市内数カ所で、多くの展覧会が開催されている。加えて、実に多種多様なプロジェクトも多く開催されており、過去最大数のイベントがこのビエンナーレで一度に行われていることになる。
Frank Bowling, “Who’s Afraid of Barnett Newman”
世界的に知られたアーティストであるダミアン・ハースト、村上隆、グレン・ブラウン、ガブリエル・オロスコ、ミハル・ロヴナーをはじめ、参加アーティストも世界中から集結。ヴェネツィアの街全体が、様々な夢、イリュージョン、そして現代という時代を反映した作品で溢れ、今までとは、ひと味もふた味も違ったビエンナーレを演出している。ビジュアル・アートから建築、映画、ダンス、音楽、そして演劇までと、フィーチャーする分野も幅広い。
Abraham Cruzvillegas, “Aeropuerto Alterno”
興味深いのは、メキシコのアーティスト、ガブリエル・オロスコのキュレーションによる「変容する日常」という展覧会。これはベルリン在住のアブラハム・クルズヴィエイガス(メキシコ)、ダニエル・グズマン(メキシコ)、ダミアン・オルテガ(メキシコ)、フェルナンド・オルテガ(メキシコ)、ジミー・ダーハム(アメリカ)、そしてジャン=リュック・ムレーヌ(フランス)という6名のアーティストが、今年のビエンナーレのテーマを解釈し、日常のモチーフを用いた作品によって冗談のような日常を提示するものだ。
Damian Ortega, “Cosmic Thing”
その他「生存の構造」「遅延と革命」「断層線」「空気の輪の間の影」「秘密」「現代のアラブの表現」「イスラエル」など多くの興味深いテーマを持つ作品やプロジェクトは、来場者から大きな関心を集めている。
第50回ヴェネツィア・ビエンナーレ受賞アーティストは以下の通り。
金獅子賞生涯業績部門
受賞者:キャロル・ラマ、ミケランジェロ・ピストレット
金獅子賞最優秀作品賞
受賞者:ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス
長期に渡って制作されたコラボレーション作品。お互いを理解するということと、夢と矛盾の実態を見事に表現した作品。
35歳以下金獅子賞最優秀アーティスト賞
受賞者:オリバー・ペイン、ニック・レルフ
昨日でもなく明日でもなく、今日という日を表現した作品。アーバン・カルチャーと、世代というものははっきりと区切られているものなのか、あるいは曖昧なものなのかという疑問を作品の中で表現。若い世代ならではの孤独と勇気が感じられる。
最優秀イタリア人新人アーティスト賞
受賞者:アヴィッシュ・ケバーフザデフ
絶妙なナレーションが光ったアニメーション作品。アート作品という枠組みの中で、様々な可能性が織り混ざっている。
金獅子賞最優秀参加賞
受賞者:ツェ・スーメイ(ルクセンブルグ・パビリオン)
サウンドとフィルム、そして作品が持つ空気という見事なコンビネーションが、瞬時に見る側の視線を釘付けにしつつも、政治的、そして哲学的な意味合いを微妙に醸し出す。パビリオンがある場所自体が、大規模な国立の展示会場を持つ必要性があるのか?という疑問を投げかけてくる。
The 50th Biennale of Venice
会期:2003年6月15日(日)〜11月2日(日)
住所:Venice, Italy
https://www.labiennale.org
Text: Simone Biffi
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Courtesy of Labiennale