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内沼晋太郎

PEOPLEText: Yuko Miyakoshi

アート的なアプローチのお仕事が多いですが、最初からそういう希望があったのでしょうか?

アートも好きで沢山見ていましたが、僕は別に美大を出ているわけでもデザイナーとしての勉強をしてきたわけでもありません。ただクリエイティブという意味でいうと、僕は学生の頃からウェブと連動するカルチャー雑誌を作ったりしていたんですよ。実際に作っていたのはかなり手作り感のある雑誌だったんですけど、ウェブサイトはコンテンツとかフラッシュの簡単なゲームを作ったり、周りの大学生を巻き込んだりしてやっていました。なので大学の時に見よう見まねで文章を書くこと、デザインすること、ウェブサイトのコーディングがなんとなくできたんですね。それから会社を辞めた時も、出版社の書籍の校正のお仕事や、バイトしてた本屋さんの系列のカフェのメニューやウェブサイトのデザインの仕事をやっていたんですよ。今はデザインで自分が手を動かすことはあまりないんですけど、ディレクションの仕事でどういうデザイナーにどういう風にお願いするかという時などに、自分がやっていた経験が生きています。

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グラフィックデザイナーの中沢貴之とフォトグラファーの間仲宇によって結成されたグラフィック/アートコレクティブ、NAMの個展「A FANTASY IN LIFE」。この時に併設された古書店「NUMABOOKFACE」から内沼晋太郎とNAMのコラボレーションが実現した。(2011年2月)

NAMとコラボレーションすることになったきっかけは何だったのでしょうか?

NAMの作品で「BOOKFACE」という黒い本が顔の形に積まれた作品があるんです。それで僕はもともとその作品のことを知っていて、かっこいいなと思っていたんです。そしたらNAMと共通の友人から次回の個展をやるにあたって、「BOOKFACE」を実際に本が買えるようなインスタレーションにしたい、という話が来まして。最初に「BOOKFACE」を作った時は積んでいる本の中身にあまり意識がいっていなかったので、中身をきちんと選びたいということで僕が紹介を受けたんです。それで僕も嬉しかったので、ぜひやりたい、ということで、最初は池尻大橋の「PUBLIC/IMAGE.3D(パブリックイメージ・スリーディー)」というギャラリーでNAMの個展の時に作りました。それが「NUMABOOKFACE」の最初で、お互いに盛り上がって、これをこのまま終わらせるのはもったいないということになり、第二弾として今回 IID世田谷ものづくり学校でやっているという経緯です。

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先の個展で発表された「NUMABOOKFACE」の巡回展示。本は全て販売されており、購入を申し込み質問に答えると、その回答をもとに選ばれた本が郵送されてくる。東京・ IID世田谷ものづくり学校(2011年5月31日〜 7月31日)

これからどんな風にアートに関わっていきたいですか?

美術でも文学でも、作家とその生きる時代や地域とは確実に隣り合わせです。その時代その地域の表現でないとほとんど意味がない。つまりこれから日本の現代文学や現代美術、その他全ての表現は、否応なく3.11以降の表現になっていきます。本屋の本棚にどんな本を並べるかということさえ、その影響からは逃れられません。もちろんそれとの距離はそれぞれ違います。僕らにとって3.11は、 NAMの個展の会期中にやってきました。そのときNAMは会期の途中でインスタレーションに手を加えました。僕自身も、そこから目をそらさずに活動をしていこうと思います。海外の人に対して言えることは、これから日本のアートはそうした意味で見応えのあるものになっていくということです。

NAMと作った作品は、本との関わり方でもあるし、本そのものを素材として作ったインスタレーションでもあるわけですけれども、僕が作るとしたらやっぱりこれからもそういうもの、本と人との関わりということ —— 今の日本や世界の色んな場所において、本がどういった存在になっていくかとか、もっとこうなったらいいのに、ということや、本がどんどん電子化して行き、それに対して反動的に紙の本に対する執着が生まれていくこと、そういうところに出てくる色んな歪みみたいなことだとかを、バンとビジュアルで伝えるということをやっていくんだと思います。ビジネスではなくて、アートの枠組みの中でやった方がばっと伝わるようなことは、その枠組みの中でやりたいと思います。

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