山口碧生

PEOPLEText: Memi Mizukami

S.I.R.」を立ち上げたきっかけを教えてください。また、困難な事はありましたか?

S.I.R.」は、2008年頭、私の周りに居る様々なフィールドで活躍する日本人アーティスト、クリエーターを集めて、皆で日本文化とサンフランシスコのローカルカルチャーを繋ぐショーができないかと思い立ち、声をかけてミーティングをしたことから始まりました。多国籍文化の入り交じるアメリカ生活の中で、日本伝統文化、そして目まぐるしく変遷を遂げる日本現代文化やアートを、もっとインタラクティブな形で伝えることはできないかと思い、オーディエンス参加型のアートショーをデザインしたいなと思ったのがきっかけです。メンバーは学生からプロフェッショナルまで、ペインター、写真家、イラストレーター、グラフィックデザイナー、ウェブデザイナー、映像作家、彫刻家、DJ、音楽プロデューサー、そして書家の私を含め過去40人以上の参加メンバーがいます。現在のアクティブメンバーは10人ほどで、創設当初の古株のコアメンバーは3人ほどですが、過去の参加メンバーは日本、サンフランシスコ、NY、ヨーロッパなどに点在し、それぞれの現場で活躍しています。

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「地跡」CHISEKI -Traces of Nature-, 310 Bowery, New York, 2010

「現実の中の非現実」というテーマとタイトルで第一弾のショーを2008年5月に開催しました。S.I.R.の特色は、ショーごとに毎回テーマをミーティングで話し合い、2〜3ヶ月かけてそのテーマのもと作品を制作するというプロセスです。以来、S.I.R.主催では四季のサイクルをベースに、夏「祭り」とかけて様々な「サイ」を表現する「SAI」、読書の秋を紹介する「頁 -PAGE-」など11回のショーを開催し、他に日本人以外のアーティストなどとのコラボレーションも含め9回のショーを手がけてきました。

諸行無常という言葉の通り、メンバーが常に固定せず常に移り変わって行くのがS.I.R.の特色であり、難しい部分でもあります。ビザの関係で帰国したり、他都市に移動していく為、常に新しい刺激がある反面、ショーのクオリティやスタイルなどを一貫させる事が難しいという点があります。けれど、サンフランシスコにS.I.R.というアーティストが帰ってこられる場所を、常に創っていたいと思っています。


A Moment With: Aoi Yamaguchi

これからの活動予定を教えてください。

まずは、6月11日にスウェーデンのウプサラという街で開催される、エレクトロニック・ミュージック・フェスティバル「VOLT」にて、スウェーデン人VJ&オーディオビジュアルアーティスト、ジョエル・ディットリッヒとのコラボレーションによる、書道と映像を融合させたパフォーマンスとして参加します。ミニマル・テクノの先駆けといわれるベルリン出身のDJ、ベン・クロックのライブビジュアルを担当します。

このプロジェクトでは、筆の動き、ダイナミックな線をディートリッヒが操作するコンピュータで読み込み、スクリーン上に投影される映像が変化をするなど、ライブ書道のモーションとオーディオ/ビジュアルを連動させるという新たな試みです。人工的な都市の中オアシスとして存在する自然の共存を、オーガニックな書道とデジタルアートの共存に置き換えて表現します。2時間の上演を計画しています。

そして6月17日には、サンフランシスコでS.I.R.主催のRISE JAPAN Vol.3を企画しています。私はヨーロッパを廻っているのでイベント当日には居られませんが、ロサンゼルスからShing02を始めサンフランシスコ/ニューヨークからデイモン・ソウル、東京からライブペイントユニットグラヴィティ・フリーをゲストに迎えての震災復興支援基金を集めるためのアート&音楽イベントです。

既存の枠に捕われず、現代書道の表現方法の可能性を探りつづけていきたいと思っています。アメリカを拠点としながら、ヨーロッパのみならずアジア各国、様々な場所を巡り、筆で文字を書くという事の愉しさ、そしてそれが平面だけでなく立体表現を通しても体感できること、その美を伝承していきたいと思っています。

日本で活動しているアーティストにメッセージをお願いします。

自分が想い描く世界があるのなら、それを形にしたい。

表現という手段で、人と繋がって行けるほど幸せな事はありません。芸術家は創り続けなければいけないと思っています。日本人特有の美的感性は世界に誇れる宝です。それが独りよがりのものではなく、周りにポジティブなエネルギーを与えられるものならなおさら良いと思います。言葉の壁を越えて、アートはどこまでも旅をします – ART HAS NO BOUNDARIES – 生涯表現者であれ。

Text: Memi Mizukami

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