ミルク倉庫+ココナッツ
PEOPLEText: Noriko Ishimizu
宮崎直孝、松本直樹、梶原あずみ、篠崎英介、坂川弘太、西浜琢磨、瀧口博昭からなるアーティストユニット・ミルク倉庫+ココナッツ。ミルク倉庫は2009年に結成。2015年にアーティストデュオのココナッツが加わった。メンバーそれぞれが専門的な技術を持ち、既存の建造物の「インフラ」を再設計するプロジェクトなどを行っている。2017年に行われた企画公募展「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2017」(アートアウォード イン・ザ・キューブ 以下 AAIC)では、大賞を受賞した。
受賞作である「cranky wordy things」は、物や身体に対する既存の認識を変える作品となっている。複数のモニターを使った睡眠実験の記録映像と、「ポルターガイスト」のように勝手に動く道具などの事物や装置で構成され、その空間は「人が物のように、物が人のように」関係づけられている。2020年4月18日から6月14日にかけて開催となるAAIC2020に先立ち、ミルク倉庫+ココナッツにインタビューを行った。
ミルク倉庫+ココナッツ Photo: 中川周
「cranky wordy things」は、テーマ「身体(しんたい)のゆくえ」をどのように解釈した作品なのでしょうか?
宮崎:このテーマはある意味、親切な付け方でもあると思うのですが、「身体」というのは、どんな作品にも究極的には関係してくることです。ですから何が重要なのかを考えると、既存の身体から離れる「ゆくえ」のほうではないかと僕らは解釈したんです。
AAIC2017のテーマにしてもそうですが、ミルク倉庫+ココナッツは、場所や条件に対して受動的な受け取り方で制作をされていますね。
宮崎:それだけではないですが、いつも作品に条件を組み込んでいくことは多いですね。
「cranky wordy things」(2017)岐阜県美術館 © ミルク倉庫+ココナッツ
AAICから出された条件(幅4.8m×奥行4.8m×高さ3.6mのキューブ内で展示する)のキューブは、作品の要素としてどのように取り入れられたのですか?
松本:キューブがあるということは、必然的に内側と外側ができます。その性質をどのように作品の中に組み込んでいくか。つまり一つのギャラリースペースとしてキューブが機能する形をいかに超えられるか、ということを考えました。
坂川:キューブがあって、そこに作品を飾るのという形ではないんです。
宮崎:そう。ギャラリースペースとしてキューブを考えてしまうと、入れ物の中に入れる、という形になりがちですが。
「cranky wordy things」(2017)岐阜県美術館 © ミルク倉庫+ココナッツ
松本:入れ物ではなく、内側と外側を分けるというキューブの性質をどうやって料理していくかということが、一つありました。観客は美術館に入ったあと、さらにそのキューブの中に入るという、入れ子状の経験をするので、この仕組みを作品としてどう扱うかということ。この点は、制作においてギリギリまで粘ったところです。
キューブ自体もオブジェクトの一つであるということですね。
松本:はい。審査員の三輪(眞弘)さんに、「このキューブ自体が思考しているように見える」と言っていただいたとき、制作時には自分たちの中で言語化ができていなかったのですが、目指したかったのはそういうことかなと。
ユニットでの制作スタイルについて伺いたいのですが、ミルク倉庫+ココナッツでの制作と、個人で制作する際のフローは、違うでしょうか?
宮崎:全く違いますね。
松本:ミルク倉庫+ココナッツではみんなでブレストしながら、個人ではできないことも、頭数がいるので「誰かやるだろう」「まあ、なんとかなるだろう」、というそれぞれのメンバーで、ある種の無責任な感覚がありますね。
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