ビル・ウォルフ

PEOPLEText: mina

2010年5月に中国上海にて開催される国際アートフェア「ART SHANGHAI 2010」に参加予定のビル・ウォルフ。過去に東京藝術大学に在籍し、木とブロンズなどを得意素材とするニューヨーク在住の彫刻家だ。先頃「COEXIST」で発表されたビルの新作「Flock」は、目覚ましい発展を遂げるネット社会とそれらがもたらすグローバルな文化や環境が多様なコミュニティを生み、個人は自由にそれらを日々選択しながらも、本来個人的なものであるはずの私たちの行動が常に群衆(Flock)と共に存在することを喩えた作品だった。そんなビルの新作「Flock」と彫刻について話を伺った。

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“Flock” (installation view), gallery COEXIST, Tokyo, Japan 2010 © Bill Wolff

「Flock」の制作背景には神話があるそうですね。それについて教えていただけますか?

12世紀の詩です。「The Conference of the Birds」という、30羽の鳥が、シムルグというペルシャ神話の神秘的で神のような生きものを探して旅をする話です。長い旅の末、30羽の鳥は、ついにシムルグの土地に辿り着きます。そして彼らが見たものは自分たちの影だけだったと気付くのです。このように、シムルグは一つの生き物であると同時に30羽の個々の生き物でもあるのです。私は、この物語がグループと個人の関係のための良い比喩として用いることができると考えました。

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“Flock” (installation view), gallery COEXIST, Tokyo, Japan 2010 © Bill Wolff

壁面にあった平面作品について教えてください。

形式上、私は壁を含むことによってギャラリーを拡大することが重要であると思いました。壁の平面作品は、30羽の鳥のための背景を意図した遠くの山々と谷のイメージです。幻想世界への窓のようなものです。私は以前、根津にスタジオを構えていたことがあって、日本画の画材屋や伝統的な墨絵を頻繁に目にしていましたし、それらを材料とすることもありましたので、しばしば自分の作品を通して日本と中国の伝統的な作品の影響が見られるようにしています。

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“Flock,” (detail) gallery COEXIST, Tokyo, Japan, 2010 © Bill Wolff

「Flock」の素材や構造について、少し詳しく教えてください。

「Flock」はシナノキでできています。軽くてアメリカでは彫刻に一般的に使われている材料です。イチョウの木と似ています。足はとても強いオーク材でできていて、人が家具をつくるために使うのと同じジョイントで材料ごとに集められています。大部分の塊が非常に細い足の上で空中に留まっていなければならないので、納得の行く感覚の動きを得るにはこれが必要でした。構造を作り上げたら削り、それから焦がして端をサンドペーパーで磨き柔らかく滑らかにします。そうして、暗い部分と明るい部分のミックスを作るのです。それから、大きな部分は化学処理して色を変えた銅箔で覆います。この方法で、表面の色は明るい木、銅箔、金茶色、そして黒のミックスになります。私は、遅い午後の日差しが鳥の群れの翼に反射しているような効果が欲しかったのです。

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