梅田宏明
PEOPLEText: Mariko Takei
映像と音響表現、ダンスが融合した「ビジュアル・パフォーマンス」で、国内外から注目を集める振付家の梅田宏明。今回、山口情報芸術センター[YCAM]にて、メディアテクノロジーを導入した身体表現の新展開に挑戦するアーティストが、山口での滞在制作を通じて、開発チームのYCAM InterLabとともに、光・音・ダンスが一体となる空間を構成するという。観客の視覚をもコントロールするビジュアル・パフォーマンスは一体どのように生まれるのだろうか。
「Holistic Strata」制作中の様子(2011、YCAM)
これまでの活動内容を含め、自己紹介をお願いします。
梅田宏明。振付家/ダンサー/ビジュアルアーティスト。1977年東京生まれ。
2000年より創作活動を開始し、「S20」を発足。2002年「while going to a condition」をフランスのフェスティバルで公演。2003年にモントリオール(カナダ)で「Finore」、2004年にリオデジャネイロ(ブラジル)で「Duo」を発表。さらに、フランスの代表的な振付家であるフィリップ・ドゥクフレ氏のスタジオでレジデンス後、2007年にシャイヨー国立劇場(フランス)との共同制作で「Accumulated Layout」を発表。この作品が、クンステン・フェスティバル・デザール(ベルギー)、バービカン・センター(ロンドン)、ローマヨーロッパ・フェスティバル、ポンピドゥーセンター(パリ)など、世界各地の主要フェスティバル、劇場に招聘され、上演。2008年にはパリのフェスティバル・ド・トンヌ、ローマヨーロッパ・フェスティバルとの共同制作作品「Haptic」「Adapting for Distortion」を発表。2009年からは、振付を開始し、ダンサーを起用した初のグループ作品「1. centrifugal」を日本、フィンランドで公演。2010年には、国際的なメディアアートの祭典「アルス・エレクトロニカ」(オーストリア、リンツ)にて受賞。また、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2010」でダンス作品を上演するとともに、光とサウンドによる体験型インスタレーションを出品。
「Haptic」 振付/出演:梅田宏明(2008)Photo: Shin Yamagata
大学では写真を専攻されていたそうですが、そもそもダンスや振付など身体表現に興味を持たれるようになったのはなぜですか?
ダンスをはじめたきっかけに、「写真」をやっていたことも大きく関わっています。写真を撮影するということは、被写体であるひとつの環境に対して距離をとることと同時に、客観性が必要になります。その環境に対し、一歩外に引く感覚というか……。そこにフラストレーションをおぼえてしまったんです。一歩外に引いて環境を描写するというよりは、その環境のなかに没入することでできる表現を求めたんですね。
それまでダンスは、友達と一緒にテレビのマネごと程度でしかしていませんでした。だからダンスを始めたころは、いろんなダンスを習ってはとにかく踊っていました。ただ、色んなダンスを観ても、本当に面白いと思えるものには、なかなか出会えませんでした。今でも、振付家に影響を受けているというよりは、森山大道さんの写真とか、ゲルハルト・リヒターの抽象画などに魅力を感じます。
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