第10回 山形国際ドキュメンタリー映画祭

HAPPENINGText: Naoto Ogawa

日本で唯一の国際ドキュメンタリー映画祭であるとともに、世界的にも有名な山形国際ドキュメンタリー映画祭が今年で10回目を迎えた。東北の一都市である山形が、各国からの人々が街を闊歩する世界の「YAMAGATA」となる一週間。

世界各国の作品が集まるこの映画祭だが、特にアジアのドキュメンタリー作品の質・量は群を抜いている。その中核である「アジア千波万波」というプログラムは、インターナショナルコンペティションとはまた異なる高いテンションを持った特集であった。

山形国際ドキュメンタリー映画祭
馮艶「稟愛」

特に高い評価を得たのは中国の監督、馮艶(フォン・イェン)による「稟愛(ビンアイ)」。前回の映画祭でも話題になった「水没の前に」という作品で取り上げられた、中国の三峡ダム建設に関わるこの作品は、それによって130万人が移転しなければならないと言われる巨大プロジェクトに飲み込まれた、一人の女性のみに焦点を当てた映画である。

ちょうどジャ・ジャンクーの「長江哀歌」もヒットしているところだが、それらの作品と見比べたとき、作家が目を向ける視点によってこれほどまでに異なる物語が立ち上がってくることに驚かされる。

山形国際ドキュメンタリー映画祭
王兵「鳳鳴 – 中国の記憶」

なお、インターナショナルコンペティションでも、中国の作家が最高賞を獲得。2003年の映画祭で、9時間にわたる大作「鉄西区」が最高賞となった監督、王兵(ワン・ビン)が、新作「鳳鳴(フォンミン)— 中国の記憶」で再び受賞した。くしくも、この作品も一人の女性に焦点が当てられた映画であった。

ところで、山形市の市政100年記念事業のひとつとしてはじまり、今回からNPO法人として独立したこの映画祭は、この巨大な規模と質をどのように継承・発展していくのか、その点でも世界の「YAMAGATA」は国内外の映画関係者から注目されている。

第10回山形国際ドキュメンタリー映画祭
会期:2007年10月4日(木)〜11日(木)
会場:山形市中央公民館、ミューズ、山形市民会館他
TEL:023-666-4480(山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局)
https://www.yidff.jp

Text: Naoto Ogawa

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