ポストメインストリーム・パフォーミング・アーツ・フェスティバル 2010

HAPPENINGText: Wakana Kawahito

10’年代に入り、映像表現はバーチャルの中でより一層リアルを求め、現実社会はより拡張されていく。そんな時代の中で、空間と時間の制約の元での表現は、前時代とは違った意味を持ちつつある。

ポストメインストリーム・パフォーミング・アーツ・フェスティバル(以下、PPAF)は、同時代の「メインストリーム」とされる舞台芸術作品に対し、「ポストメインストリーム」とみなされるアーティストたちの実験的、断片的、単独的なアプローチに着目している。そして、フェスティバルのあり方も、プロデューサーの一人、小沢康夫氏が『自分たちの場所を自分たちで一から作ること。それを大切にしている。』と語るところに現れている。

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ホテル・モダン「KAMP/収容所」Photo: Herman Helle

第一回目が2003年に始まり、そこで紹介した「PME」というカナダ・モントリオールのカンパニーによる「アンリハースド・ビューティ/他者の天才」にインスパイアされて「三月の5日間」(チェルフィッシュ)が生まれた。以後、3年おきに開かれているPPAFは、日本の舞台芸術シーンに影響を与えて続けてきた。そして、3回目である今回はベルギー、オランダ、イギリス、日本から全部で6作品が上演される。

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メゾンダールボネマ&ニードカンパニー「リッキーとロニーのバラッド」Photo: Maarten Vanden Abeele

これが日本初演となる「メゾンダールボネマ&ニードカンパニー」による「リッキーとロニーのバラッド」で、フェスティバルは幕を開けた。

“ポップオペラ”と名付けられたこの作品は、「メゾンダールボネマ」のハンス・ペター・ダールとアンナ・ソフィア・ポネマ演じる2人が、ポップロック調の曲をフラットな声で歌う、新しい“オペラ”。都会に住んでいる、現代によくいるタイプの夫婦が、各々の、そして2人のファンタジーを語り合うことで物語が進む。彼らのダイアローグは、次第に幻想世界へと逃避していき、それによってかえって現実を浮き彫りにする。

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メゾンダールボネマ&ニードカンパニー「リッキーとロニーのバラッド」Photo: Maarten Vanden Abeele

『ここでいうファンタジーとは、矛盾した社会における、セルフポートレートとしての意味を持つんだ。都会に住み、仕事を持ち、必要以上に都市を消費していく夫婦。そのような夫婦、東京にもいるだろう? そして、彼らは、人生をより楽しくて、良いものにしようと努力するんだけれども、どうしてか、それはおかしな方向にいってしまうんだ。』とハンスは言う。

この物語は、さらにもう一人の登場人物を加え、続編「Ricky and Ronny and Hundred Stars」として、2010年2月にブリュッセルで初演を迎える。

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