シンコ
PEOPLEText: Celeste Najt
数々の有名広告代理店や制作会社での経験をバックグラウンドに持つことで知られる、マリアーノ・シーガル、ロリー・カルネロ、セバスチャン・シーガルは、「手作り」に帰着する新しいクリエイティブなコンセプトを主とする独自のプロジェクトにとりかかっている。
スロー・ムーブメント※というアイディアと共に、シンコ(CINCO)はデジタル時代のリズムをゆるやかにしていくねらいだ。それは、これまでと同様の効果で答えつつも、それぞれの作品をユニークなものに変えるのに必要な時間と感性を与えるというものである。
※スロー・ムーブメントは、ゆとりある生活のペースへの文化的なシフトである。スロー・ムーブメントとはその原理に服従するというよりはむしろ、バランスの取れた時間の使い方を目指すものである。時間節約のためにはテクノロジーの恩恵は受けつつ、散歩したり、友人と食事を楽しむといった時間を捻出するのである。人間の活動において、テクノロジーは作業効率を高め、製品や食品の流通を可能にするが、スロー・ムーブメントの支持者たちは、それは人生の最も重要なことを発展させるものではないと考えている。
シンコはコンピューターをできるだけ使用せずに、個人の痕跡や、制作者の関与やスキルを示す特徴的な考えを、それぞれの作品に持たせたいと考えている。それは野望であり、その結果は個性や人間のもつ解釈を示すものとなる。
『コンピュータがフィルターとして作用すると感じているので、このような方法で作業するようにしています。そのフィルターは、アイディアを実行する人と、それが達成されるターゲットの人の狭間で結論を歪めてしまう。初めは非常に複雑だと思っていたが、結果を見るようになって、それが良いと、そうするより他に良い方法はないと強く思い始めたのです。僕たちは「美」を欠点から見つけました。それは僕たちにとって不完全な完全なものであり、ユニークで、独自であるためのカギだったのです』とマリアーノは述べている。
「見せかけではない」ことから始まる美学で、シンコはクリエイティブな資源の機能的な使用を始めた。その資源とは、アイディアを実体化したり、スタンダード志向から離れたり、知識とプロの経験による作品の質にフォーカスするなど、真の可能性を取り入れているものである。
『ただ面白い作品ではなく、人の感覚にはない美学センスでそれぞれのプロジェクトを進めたいですね。僕たちは個人の意志と共に後に残る人々が存在することを示し、完成させたい』
シンコは、映画、写真、グラフィックデザイン、イラスト、現代アートのそれぞれの分野で優秀なプロの集団である。「不完全に完全な作品」のユートピアは、シンコの主役達それぞれの個人による痕跡で構成された新しいクリエイティブな言語で具現化される。
Text: Celeste Najt
Translation: Megumi Tsuruoka