マーチ21 展「テーマ・フォー・トゥナイト」
HAPPENINGText: Aya Takada
3月21日、今日から春です、と報告されても素直に季節感を切り替えるのはなかなか難しい。けれど、春と同じ誕生日の「マーチ21」と共に過ごす春分は眠っていた感覚に刺激を与えてくれたような気がする。新しい芽が出てくる前にユースという季節を感じさせてくれたのかもしれない。
「テーマ・フォー・トゥナイト」と題された展覧会のオープニングレセプションが3月21日の夜、トレイシー・ローレンスギャラリーで開催された。マーチ21は、フィルムメーカー、ミュージックプロデューサー、DJとしてバンクーバーを拠点に活動するビジュアルアーティストである。彼はサブカルチャーを背景にユースの視点で作品製作に取り組んでいる。
今回の展覧会は二つのスクリーンを用いてのビデオ・インスタレーションとブループリント・ドローイング。社会的でポリティカルなティーンエイージャーのバイオレンスを題材に公共と個人の関係を表現した作品だ。
ブループリントに描かれた設計図は、マーチ21によりランダムに選ばれた14歳の少年達が描いたドローイングで、1968年に出版された「アナーキスト・クックブック」を元にしたものである。少年達が描いたものは崩壊、破壊を目的とする活動の設計図。いわゆる未成年者の彼等が思い描くファンタジーとでもいえる。秩序を必要としない、反社会的なアイディアに溢れたドローイングが青く(“未熟さ”に溢れ)一面にギャラリーの壁に貼り付けられている。そして、ビデオ・インスタレーションは実際に少年たちが実行する“バイオレント”な行動を再現している。正面のスクリーンに映し出されているのは学校らしき建物。そしてもう一方のスクリーンからはロケット花火が打ち出されるシーンが映し出されている。オーディエンスはその二つのスクリーンにはさまれた状態になり、ロケット花火が頭上を越えて正面の建物のスクリーンに映し出されるのを眺めるようになっている。パブリックと少年達のアクティビティの関係を表しているかのようだ。
常に監視下に置かれている若者の行動。彼等が思い描く設計図が彼ら自身の公共での活動範囲を制限してしまっているように見えるが、その設計図の多くはアナーキー的ファンタジーに過ぎない場合も多い。マーチ21自身の経験がこの個人的なアイディアと公共の関係をあらゆる視点から見つめる事を可能にしているに違いない。
マーチ21のバースデーでもあるこの日は、彼を祝福する大勢の若者がギャラリーに集まった。彼は毎週金曜、ナイトクラブ・シャインでDJとして活動している。オープニングナイト後、ギャラリーに集合した人々はもちろんシャインでマーチ21の日を祝い続けた。
新しい季節が始まる、そんな賑やかな気分を味わった後は、その気分の後味を惜しむのではなく、その新鮮な味を大切にしながら、何か始められたらいい…。
MARCH21 “THE THEME FOR TONIGHT”
会期:2003年3月21日(金)〜4月12日(土)
会場:Tracey Lawrence Gallery
住所:105-1529 W.6th Avenue, Vancouver
TEL:+1 604 730 2875
https://www.traceylawrencegallery.com
Text: Aya Takada
Photos: Aya Takada