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デ・キリコ展

HAPPENINGText: Alma Reyes

形而上絵画」という言葉が登場したのは、20世紀初頭のことである。ジョルジョ・デ・キリコらによって提唱されたこのイタリア絵画の芸術動向および絵画様式は、歪んだ遠近法、脈絡のないモチーフの配置、幻想的な雰囲気を特徴とし、サルバドール・ダリやルネ・マグリットといったシュルレアリストの画家をはじめ、数多くの芸術家に多大な影響を与えた。ミュンヘンで美術を学んだ彼は、アルノルト・ベックリン、マックス・クリンガー、そしてフリードリヒ・ニーチェのようなドイツの哲学者から大きな影響を受け、フランス印象派を取り入れた同時代の画家たちとは異なり、デ・キリコはむしろ象徴主義に従った。


《17世紀の衣装をまとった公園での自画像》の前でポーズを取るジョルジョ・デ・キリコ、1968年、自宅のサロンにて、ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団蔵  © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024 Photo: Walter Mori

日本では10年ぶりとなるジョルジョ・デ・キリコの大規模な展覧会「デ・キリコ展」が、東京都美術館で8月29日まで開催されている。本展では、イタリアのジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団から貸与された作品を中心に、世界中から集められた絵画、彫刻、挿絵、舞台衣装など100点以上が展示されるデ・キリコ芸術の全体像に迫る大回顧展だ。その中には、フィレンツェのウフィツィ美術館ベルリン国立美術館ニューヨーク近代美術館大阪中之島美術館などが含まれる。

この素晴らしいショーケースは、著名な美術史家ファビオ・ベンツィのキュレーションによるものだ。初期の自画像から、形而上絵画の核心、広場やインテリアの解釈、神秘的な浴場、有名なマヌカン、彫刻、演劇衣装、古典芸術への回帰、新形而上絵画の出現まで、巨匠の複雑な人生の段階へと来場者をいざなう。


ジョルジョ・デ・キリコ《自画像》1922年頃、トレド美術館蔵  © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024 Photo: Alma Reyes

最初のセクションでは、デ・キリコの自画像や友人、家族、知人の肖像画が紹介されている。デ・キリコは何百枚もの肖像画を制作したが、その多くは古典的なアプローチを仄めかすものだった。《自画像》(1922年頃)では、デ・キリコは自身をモチーフとした胸像と自分自身の姿を描いている。この相互参照は、画家と歴史との対話を概説している。


ジョルジョ・デ・キリコ《17世紀の衣装をまとった公園での自画像》1959年、ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団蔵  © Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

同様に、《17世紀の衣装をまとった公園での自画像》(1959年)では、まるで舞台で演じる役者のようにバロック風の衣装を身にまとった自身の姿が、馬や英雄的な人物といった神話的なモチーフともに、古代のリトグラフによく見られる風景を背景に描かれている。

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