「アート・ミーツ・メディア:知覚の冒険」
一般的に広く使われながら厳密に定義しづらい「メディア・アート」とは何か?というテーマに取り組んだ意欲的な展覧会が、1月21日から東京・NTTインターコミュニケーション・センターで「アート・ミーツ・メディア:知覚の冒険」というタイトルのもと行われている。冷戦体制の崩壊後以降を一つの年代的区切りと捉え、コンピューターの普及とあいまって、メディア・アートがどの様に変化し現在に至ったのかということや、またその特徴や可能性を考察していくという展覧会だ。
さて、展示の内容だが、インタラクティブな作品からテクノロジカルな作品、視覚・聴覚につよく訴えかける作品、また社会性が強い作品など、およそメディア・アートという枠組みの中で考えられる作品が様々な文脈の上で語られていた。
「db」池田亮司, 2002 Courtesy of NTT InterCommunication Center (ICC)
いくつかの作品にふれてみると、まずは池田亮司の「db」。一切光を排した無響音室でのインスタレーションと、蛍光灯を百本以上使い過剰なまでの白い光に包まれた二つの部屋を合わせた一対のインスタレーションで、空間とサウンドを対照的な二つのベクトルに極限まで結晶化したような作品である。
この作品を完璧に語りうる言葉を持っていないのは残念だが、それでもなお、何か語りうるとすれば、この人工的に作られた空間とサウンドが、ぼくらが日常生活するフィールドに決して存在していないものでなく、日常に溢れているものということだ。
だが、それは余りにもその他のノイズに埋もれいて、うっすらと感じることしかできずにいるということを、この作品を通して触れることで、知ることができる。現実に存在しているものそのものを、光と音など無駄な情報の一切を排除し、池田亮司的観点で配置した形で表現した、美しくも凶暴なインスタレーションであった。
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