越後妻有アートトリエンナーレ 2000
HAPPENINGText: Yasmeen Ikeda
白井美穂「注文の多い料理店」
日本人なら誰でも知っているだろう宮沢賢治の「注文の多い料理店」を現実の世界に再現したのは白井美穂。色鮮やかな8枚の扉が空間を切り、それぞれに注文が書いてある扉を開くとそこから物語の中に迷走してしまうような、でも扉を開けずに入られない作品だ。メルヘンチックな誘いにすでに沢山の人が扉をくぐったそうだ。
マイケル・エルムグリーン&インガ-・ドラグセット「ストラクチャーズ・フィギュア・77」
またこの地域でとてもユーモアのある作品を見ることができた。マイケル・エルムグリーン&インガ-・ドラグセットの「ストラクチャーズ・フィギュア・77」と題されたこの作品は、「HARLEM」と描かれた看板が山頂にかかげられているというもので、アメリカにはハリウッド、新潟の松代ではハーレム、果たしてその先には?などといろいろな想像を持たせるため当初は地域の住民の中には快く思ってない人もいたらしいが、この先には東京に近い距離にありながら大都市の富やハイテクから遠のいているという妻有の状況に対してのアイロニカルな視点を提示している。
ジョセップ・M・マルティン「ミルタウン・バスストップ」
また、ジョセップ・M・マルティンの作品「ミルタウン・バスストップ」では日常的な素材をテーマに架空の映画ポスターを製作。そこには「犬伏シネマ」や「新潟フィルム」などの架空のロゴを記し、バス停や、駅の広告として使用されている。この試みは日常に変化をもたらすというもので、実際そこで生活をするのが映画の一つのシーンとなるような、とても活々としたポスターに感じられた。
今回SHIFTでは30作品を紹介することができたが、これはほんの一部にしか過ぎない。紹介しきれなかった100以上の作品の中にも興味深いものが沢山あった。今年は、10年計画として計画されているこのフェスティバルの最初の年であり、3年ごとにまたフェスティバルとして開催されるという。10年かけて作品を制作する作家もいれば、3年ごとに新しい作品を制作する作家もいる。今年制作された作品が、10年という年月の中で作品がどう自然と同化していくのかというのも興味深い。3年後にはまた新しい作品が増え、その後の3年後には多大な数の作品が生まれ、近い未来には妻有の地域が「芸術の村」と呼ばれることになるだろう。
国際化、近代化の今、何処よりも的確に催されたこのフェスティバルは地域のものだけではなく、日本人の誇りとも言えるのではないだろうか。そしてこのフェスティバルでは、見て、感じて、触れて、自然の中の作品に参加できるので、実際に興味を持たれた方はぜひ訪れて体験して欲しい。
越後妻有アートトリエンナーレ 2000
会期:2000年7月20日(木)〜9月10日(日)
会場:越後妻有6市町村
TEL:0257-57-2637(越後妻有大地の芸術祭実行委員会事務局)
https://www.echigo-tsumari.jp
Text: Yasmeen Ikeda
Photos: Yasmeen Ikeda