越後妻有アートトリエンナーレ 2000

HAPPENINGText: Yasmeen Ikeda

この松之山町には、森緑に囲まれた温泉郷、山の傾斜一面に広がる棚田があり、最も作品と調和していた町だった。


マリーナ・アブラモヴィッチ「夢の家」

まずここ松之山を訪れると、奇妙な家が現われた。それはマリーナ・アブラモヴィッチの作品「夢の家」だ。人里から更に細道を登るとまるでお化け屋敷のようにひっそりとその建物はある。来客者は昔の雰囲気に入り込めるように、いろりばたで昔話を聞き、彼女がデザインしたパジャマに着替え、水晶の風呂に入り、「夢見るための部屋」の棺桶のようなベッドで眠る。そしてそこで見た夢は「夢の本」に綴られ、かつての民謡のように人々が見た共同の夢が受け継がれるようになっている。


村岡三郎「SALT」

次に「溶接芸術」の先駆者といわれる村岡三郎の作品「SALT」を大厳寺高原内で見ることができた。この三角の建物の中に入ると、目には大量の塩が見え、手では建物すべてを感じ取り、鼻では塩の解ける匂いを嗅ぎ、耳からは鉄製の坑道を通じて遠く離れた人々の話声が聞こえ、自分の口から発している声までがまるで別人のような錯覚にとらわれる、そんな人間の五感すべてを使って感じることができる不思議な気分に駆られる作品だった。


N55「公共物」

一風変わって、とてもモダンなオブジェクトを作り出したのは、N55の「公共物」。これは公共物というだけあって、沢山の人に多様に使われるように何ケ所かの小さな広場に置かれている。耐熱性があるのでキッチンとして、全面ビニールで覆われたうすいマットを広げベッド代わりに、ソーラパネルからは太陽の光を集めランプをともすエネルギーとして、一部を切り離すと机と椅子になり、そして演説をしたい時は透明なホースから話すとじょうご型の筒を通って拡大されるなど、多様多目的に実際に使用できる作品だ。それだけではなくさらに自分だけの使い方を発見してみるのも楽しみ方の一つだろう。夏の間はここで野宿をする人も増えそうだ。

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