帝国ホテル二代目本館100周年:フランク・ロイド・ライト ー 世界を結ぶ建築

HAPPENINGText: Alma Reyes

20世紀近代建築の最も傑出した先駆者といえば、フランク・ロイド・ライトの名前は間違いなく外せない。70年間に1,100以上の建築物を設計したという驚異的な記録を持つライトは、「有機的建築」の思想に重点を置いており、そのコンセプトは、建物の起源、地形的な立地、使用用途などの個々の状況を尊重するというもので、カウフマン邸(落水荘)やソロモン・R・ガウナー邸、グッゲンハイム美術館のような有名なプロジェクトにこの考え方よく表れている。


展覧会エントランス、パナソニック汐留美術館 Photo: Yukie Mikawa

ライトは日本で数々の功績の種を蒔いた。帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)は、ライトの最も偉大な遺産の一つである。パナソニック汐留美術館では、1923年創業の帝国ホテルの100周年を記念して、3月10日まで「フランク・ロイド・ライト ー 世界を結ぶ建築」を開催している。日本にアーツ・アンド・クラフツ運動が導入されて以来、初めて西洋式の生活様式と美学を融合させた本格的な総合芸術作品と評価されるこのホテルの設計に、ライトを駆り立てたインスピレーションの源泉に焦点を当てた壮大な展覧会だ。フランク・ロイド・ライト財団、コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館、国内外のコレクターや美術館から寄贈された建築図面、写真、模型、家具、食器、インテリア、映像などを紹介し、ライトの建築と美術工芸への多大な貢献を総括する。


セクション1: モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観 Photo: Yukie Mikawa

ライトが建築家になる運命は、生まれる前から母親によって決められていた。ウィスコンシン州の片田舎からウィスコンシン大学マディソン校で土木工学を学んだ彼は、1887年にシカゴに移り、ジョセフ・ライマン・シルスビーの弟子となり、その後、ダンクマー・アドラー&ルイス・サリヴァン事務所に移った。有機的な成長、空間のバランス、インテリアのリズミカルな強化というサリヴァンの確固たる原則は、装飾や自然の要素へのライトの細やかな配慮に大きな影響を与えた。展示の最初のセクションでは、ライトの確固たるキャリアを形成した1800年代後半のシカゴの建築シーンを紹介する。


フランク・ロイド・ライト《第1葉 ウィンズロー邸 透視図》『フランク・ロイド・ライトの建築と設計』1910年、豊田市美術館蔵

素材と自然との結びつきを提唱したライトの建築家としての最初の作品は、ウィンズロー邸(1893~94年)で、水平ライン、平らな屋根または寄棟屋根、大きく張り出した軒、石、木、レンガなどの自然素材の使用で構成される、彼独自の設計手法、プレーリー・スタイル(草原様式)を投影したものだった。

ライトのウェールズ人の血筋と宗教的背景(父は万国主義者の牧師、母はオークパーク統一教会の会員、叔父はユニテリアン派の伝道師)は、ライト自身が住み、働いていたイリノイ州オークパークにある統一会堂(1905〜08年)の設計を依頼されたことと、ある種の繋がりをもたらした。予算の制約から、ライトはこの建物の主要な材料としてコンクリートを選んだが、それにもかかわらず、伝統的な西洋の教会建築を想起させるものであった。1905年に初めて日本を訪れたライトは、日本の神社の権現造りの特徴や、浮世絵の構図やモチーフをデッサンに反映させており、ライトにとって初の公共建築となった。

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