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帝国ホテル二代目本館100周年:フランク・ロイド・ライト ー 世界を結ぶ建築

HAPPENINGText: Alma Reyes

1893年のシカゴ万国博覧会では、平安時代中期、室町時代、江戸時代をテーマにした日本館「鳳凰殿」に驚嘆したという。日本館のモチーフとなった平等院鳳凰堂は、ライトの設計方針と一致していたのだ。また、ライトの日本美術、特に錦絵への深い情熱は揺るぎないものだった。ライトは必然的に日本美術愛好家、美術商、展覧会プロデューサーとなり、特に1906年にはシカゴ美術館で初の広重展を開催した。この展覧会では、ライト自身が収集した広重の版画213点を展示した。彼は、浮世絵との出会いに触発されて、それまで規範とされてきたボザール様式の建築図面とはまったく異なる新しい図面の描き方を考案した。


模型 山邑邸(現・ヨドコウ迎賓館)兵庫県立大学環境人間学部水上研究室 制作:2023年 Photo: Alma Reyes

それ故に、ライトが後年日本でプロジェクトを進めるのは当然のことだった。本展では、小田原ホテル(1917年)、東京劇場(銀座映画館、1918年)、山邑邸(ヨドコウ迎賓館、1918〜24年)、自由学園(1921年)などが紹介されている。いずれも自然の地形に呼応し、自身のテーマである「タリアセン(ウェールズ語で輝く眉)」と調和する中庭、庭園、水景を取り入れた。


横型(3Dスキャン&3Dプリンタによる)帝国ホテルニ代目本館 建築:フランク・ロイド・ライト 制作:京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab 制作:2023年 Photo: Alma Reyes

近代国家を目指した日本の「迎賓館」の役割を担って、帝国ホテルは1890年にオープンした。その後、木造建築の老朽化と、限られたスペースでは手に負えないほどの利用客の増加により、早急な改修が求められ、ライトは2代目の改装を担当することになった。当時のホテル支配人であった林愛作は、ライトの浮世絵コレクションに親しんでおり、彼ならば現代の需要に合わせた近代的な改修ができると信じていた。ライトは、耐火性に優れた栃木県産の大谷石、レンガの縦目地を目立たなくする愛知県産の常滑焼のれんがとテラコッタ、壁、柱、天井、床をつなぐ鉄筋を採用した。内装、家具、食器、そして幾何学模様を反映した全体的な細かなポイントもデザインした。1923年9月11日、ホテルの落成式の日に関東大震災が起こり、ホテルは甚大な被害を受けたが、ライトの設計した本館は壊滅的な被害を免れた。この奇跡は、振動を吸収する「浮きいかだ基礎」の工夫、テラコッタ、地震の衝撃を和らげる多数の間仕切り壁によるものだった。本展では、100年前の帝国ホテル模型を京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labの最新の技術力による3Dスキャン計測データを用いた3Dプリントで精密に再現したレプリカも公開している。


セクション5: ミクロ/マクロのダイナミックな振幅「ライト建築を体験、ユーソニアン住宅の原寸モデル」 Photo: Yukie Mikawa

ライトによるその他の装飾デザインは、クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス(1912年)、リバティー誌(1927-28年)誌のための表紙デザイン案やアクセサリーに見られる。帝国ホテルの椅子2脚(1913年、1920年)とサイドテーブル、クーンリー・ハウスの椅子(1908年)、ラーキン・ビルディングの机と付属の椅子(1904年)、ジョンソン・ワックス・ビル 本部棟 中央執務室の椅子(1936年)、自由学園の椅子(1922年)などが展示されている。また、マサチューセッツ州アマーストのベアード邸(1940年)をモデルに伊豆産の杉材で作られたユーソニアン住宅(*)の原寸モデル(2023年)も見学できる。

*ライトが1930年代後半から取り組んだ、一般的なアメリカ国民が住むことのできる安価で美しい住宅

パナソニック汐留美術館 開館20周年記念展
帝国ホテル二代目本館100周年:フランク・ロイド・ライト ー 世界を結ぶ建築

会期:2024年1月11日(木)〜3月10日(日)
開館時間:10:00~18:00(但し2月2日(金)、3月1日(金)、8日(金)、9日(土)は20:00まで)
休館日:水曜日(但し3月6日は開館)
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1丁目5−1 パナソニック東京汐留ビル 4階
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://panasonic.co.jp/ew/museum/

Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
Photos: Courtesy of Panasonic Shiodome Museum of Art

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鈴木将弘
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