KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023

HAPPENINGText: Amelia Ijiri

第11回を数える、1年に一度の国際的な写真の祭典、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023が、4月15日から5月14日にかけて、京都の歴史的・文化的施設を会場に開催された。今年のテーマは、「BORDER(境界線)」。共同創設者/共同ディレクターのルシール・レイボーズと仲西祐介は参加者に、人を繋いだり隔てたりする、ある時には目に見え、ある時には見えない、様々な境界線について考えを巡らせるよう求めていた。15のメインプログラムが開催された今年のKYOTOGRAPHIEの見どころは、人間の条件というテーマを追求する写真家たちがベテランから新進気鋭まで顔を揃えたことだ。スペイン生まれのセザール・デズフリによる「Passengers 越境者」と、キューバ人アーティストのマベル・ポブレットによる「WHERE OCEANS MEET」の2つのプロジェクトでは水が探究されていた。海や湖は人を隔て、また架け橋ともなることを示すものだ。島国である日本の来場者にはうってつけの展示である。また、境界線が一時的に通過するものである移民の世界において、衣服を題材にしてナショナル・アイデンティティーを問う写真家もいた。日本人写真家の高木由利子は民族衣装を着る世界各国の人々の写真を展示し、ココ・カピタンは京都で生活するティーンエイジャーたちに焦点を当てていた。


César Dezfuli “Passengers”, With the support of Cheerio Corporation Co., LTD., Sfera ©︎ Kenryou Gu – KYOTOGRAPHIE 2023

「Passengers 越境者」は、118人の難民の危険な渡航を記録に留めたものだ。この難民たちは政治問題、貧困、病気を理由に西アフリカの国々を逃れ、リビアを経由してヨーロッパを目指した。そして2016年8月1日、救助されたばかりのところをポートレートに収められた。セザール・デズフリはヨーロッパに渡った難民たちを探し出し、現在の生活を撮影することに取り組んでいる。彼らは政府の怠慢かつ官僚主義的な対応にさらされることも多い。インタビューの多くは、人身売買業者から暴力や窃盗を受け、ようやく(彼らの長い旅の最終局面である)ゴムボートに乗船するまでの危険な道中を振り返るものだ。難民の写真の多くは隣合わせに展示され、山尾エリカ (Loewe)がデザインした船の形をした空間により、難民たちのイメージがより身近に感じられた。境界線は人を閉め出したり閉じ込めたりするため、苦しみや不当行為は嫌でも目に入ってくる。デズフリの作品は移住、アイデンティティ、人権にハイライトを当てたものである。


Mabel Poblet “WHERE OCEANS MEET”, Presented by CHANEL NEXUS HALL, The Museum of Kyoto Annex, ©︎ Takeshi Asano – KYOTOGRAPHIE 2023

マベル・ポブレットの「WHERE OCEANS MEET」では、折り紙や写真の断片をキャンバスにピン留めしたものなど、瞑想的な作品が展示されており、“水” や “海” の中にいるような錯覚が演出されていた。また、無数の鏡や写真の断片を通り抜ける没入体験型のインスタレーションも展示されている。おおうちおさむ(ナノナノグラフィックス)が手掛けた青緑色の外壁により、京都文化博物館別館内の作品は自然光で変化して見えた。ポブレットは、自らの作品は鑑賞者が体感することで完成する、と述べている。


Yuriko Takagi “PARALLEL WORLD”, Presented by DIOR, Nijo-jo Castle Ninomaru Palace Daidokoro Kitchen and Okiyodokoro Kitchen ©︎ Kenryou Gu – KYOTOGRAPHIE 2023

日本人写真家である高木由利子のプログラム「PARALLEL WORLD」は、高木が40年以上にわたって記録した衣服と人体の写真を展示するものだ。一方のシリーズでは、様々な国で日常的に、あるいは特別な場面で着用される民族衣装が展示されており、民族性、ジェンダー・アイデンティティ、社会的地位が表現されている。もう一方のシリーズでは、ディオールが特別協力した現代ファッション写真が展示された。高木のプログラムはユネスコ世界遺産に登録されている二条城 二の丸御殿 台所・御清所で催され、庭に作品を展示した。それにより屋内と屋外が連続しているような体験を味わうことができる。会場構成を担当した田根剛(ATTA)は、金銭的な側面、時代に即した側面、時間を超えた側面における写真と時間の連続性を来場者が感じてくれることを願っていた。

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