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HYMN

PEOPLEText: Noriko Ishimizu

アーティスト・HYMN(ヒン)は、アプロプリエーション(盗用)の方法論を用いた「virtual spray(ヴァーチャル・スプレー)」という独自の手法を駆使する若きアーティストだ。西洋絵画の巨匠の作品やキャラクターアイコンをデジタルの要素であるビットで再構成して、スプレーとポスカで描く。

去る、2018年9月14日から16日にかけて、大阪・梅田のハービスホールで「アンノウン・アジア 2018」が開催された。アジアの若きクリエイターを繋ぐ場所である同フェアは今年で4回目の開催となり、アジア10カ国から200組の作家が出展した。今回、審査委員として参加した当サイト編集長の大口岳人がSHIFT賞にHYMNを選出。彼女に自身の制作について語ってもらった。

まずは自己紹介をお願いします。

HYMN(ヒン)といいます。東京都在住のアーティストで、千葉県出身の28歳です。2014年に多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業し、本格的な制作は2017年からスタートしました。

アンノウン・アジア 2018に出展された時の印象はどのようなものでしたか?

来場者やレビュアーの方が多い印象でしたね。商業的なイラスト作品が多いイメージだったので、自分は「アウェーなのでは」と不安でしたが、作品をいいと言ってくれる方が多くて良かったです。


Adult Coloring (Crying Woman), 2018, Spray and Posca on Canvas, 1,000 × 803 mm

SHIFT賞を受賞した感想を教えて下さい。

当日のことを思い返すと、大口さんには何回かブースに来ていただいていたのですが、賞をいただける感じではなかったので……不意の受賞でした。評価していただけて嬉しいです。

2015年に東京・原宿のギャラリーで行った展示が初個展だと略歴にありますが、この時にはどういった作品を展示されたのでしょうか?

卒業したことをきっかけにした展示だったため、今の作品とは全く作風が違います。手描きのドローイングをデジタルに取り込んで出力した作品でした。卒業後はデザイン会社に就職したのですが、アートをやりたいと思っていました。

この頃からアナログとデジタルを組み合わせることは、やっていたのですね。

そうですね。小さい頃からパソコンに入っていたペイントツールで絵を描いていたので、デジタルツールに慣れていました。それをアナログに落としこんだら面白そうだと思って試したのが、「virtual spray」シリーズです。


Adult Coloring (Les Demoiselles d’ Avignon), 2018, Spray and Posca on Canvas, 803 × 803 mm

アンノウン・アジアに展示された作品は、マティス、ピカソ、ディック・ブルーナの絵を使った「virtual spray」でした。これらの作品のコンセプトについてお聞かせください。

共通したコンセプトは「Adult Coloring(大人の塗り絵)」です。「virtual spray」はその中のひとつのシリーズです。デジタル画面上の要素であるピクセルを用いてスプレーを表現するもので、グラフィティ的に塗り絵をしています。グラフィティはいろいろありますが、軽やかに壁に描くというスタイルに関心があって、私はそれを絵画でやりたいと考えています。

マティス、ピカソ、ブルーナの絵を素材に選んだ理由は?

自分が好きな作品というのはもちろんのこと、よりキャッチーで多くに周知されている図像を選択しています。塗り絵の素材としても見ているので、その点も考慮しています。みんなが知ってるイメージを使うことで、私の解釈を伝えられると考えています。

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