2015年に、所属ギャラリーである東京の「TARO NASU」（タロウナス）では初となる個展「The Day After Yesterday」（昨日の後の日）を開催されました。どのような作品で構成されたのでしょうか？

「配置の森の住人と王様」は、2010年に「青森公立大学 国際芸術センター青森」で滞在制作した作品です。その時は、映像の上映と「配置の森」と呼んでいる撮影セットのインスタレーションをつくりました。映像に映る人やインスタレーションを見る人が住人、映像を見るカメラの視点は王様になぞらえています。

その後、映像を小さくして、カメラに入るくらいのものにしたい、といろいろ試したところ、箱に入れて７インチのモニタで見せるという形に落ち着きました。

「配置の森の住人と王様」Video, Installation, 2010 © Michiko Tsuda

セット自体は、「あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。」の元になったもので、当時は縦長の枠付きの姿見と、素抜けの枠と、枠付きの白い壁の３種類でした。インスタレーションでは、ビデオカメラとテレビモニタをつないでリアルタイムの映像を流して、枠と組み合わせて配置しました。

後に、『映像が同じ枠にはまるといいのでは！縦長で地面から置いていると全身が映りすぎるけれど、横長で浮いていると、その中が鏡なのか抜けているのかよりわからないし、目線の高さにあると絵や写真のようにも見えるし、4:3の枠を吊ってみよう！』と、もろもろ気づいて、セットのインスタレーションから独立して、「あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。」になりました。

Installation view of “She would come back there to see her again at the following day.”, Dual Screen Video, 2014, at The Day After Yesterday, © Michiko Tsuda, Courtesy of TARO NASU, Photo: Keizo Kioku

「She would come back there to see her again the following day.」（彼女は、翌日彼女に会いにそこに戻ってくるでしょう。）は、２画面の映像作品で、一人のダンサーの動きを角度を変えて記録して、それを並べて見たときに、片方を反転するとダンサーの体の向きによって、ほとんど同じだけれど何かが違う２つの映像になることに気づいたのです。同時に得ることが不可能な二つの視点から、細部をじっくり見る、気持ち悪さのある作品になったと思っています。

Installation view of “reward”, Installation, 2015, at The Day After Yesterday © Michiko Tsuda, Courtesy of TARO NASU

「reward」は少し違うアプローチのもので、フランス人のアーティスト、カロリーヌ・ベルナールとの共同制作からはじまりました。彼女の母親が森でデジタルカメラを拾ったことに端を発していて、彼女が中のデータを送ってくれました。

フランスと日本で離れているので、インターネットを介してやりとりしていたことから、他にもウェブカムなどのインターネット上にある画像や映像、またインターネットで送れるくらい軽いデータの素材を使って共同制作していました。ちょうどグーグルが日本でもストリートビューをはじめた2008〜09年ごろの事で、ストリートビューの画像についてよく話していました。

それで、現地に行ったことのない私が日本からストリートビューの中で、その拾ったカメラのデータに写っている人や場所を探しました。カメラを拾ったのがグルノーブルというところだったので、そのあたりから周囲の道を全て見て、映り込む山の形から屋外コンサートの会場を発見して、誕生日を祝ってもらっている女性にそっくりの人を見つけました。ストリートビューのパブリックな画像と、拾ったカメラに入っていたプライベートな画像は由来が全く違うのに、並べてみると、一連の出来事のようにも見えて、2010年にストリートビューのスクリーンキャプチャと写真をプリントして、家族アルバムとして完成させました。TARO NASUの個展ではもう少し踏み込んで、アルバムだけでなく彼らを探す途中の、画像を整理している様子を再現したインスタレーションを行いました。