「カルダー:そよぐ、感じる、日本」
HAPPENINGText: Alma Reyes
動く彫刻であるモビールの発明によって近代彫刻の概念を一変させたアメリカ人アーティスト、アレクサンダー・カルダー(1898-1976年)。ボルトで固定した鉄板を使った壮大なスケールの彼の屋外彫刻は、パリのヴァンドーム広場、シカゴのフェデラル・プラザ、モントリオールのジャン・ドレポー公園、マドリードの国立ソフィア王妃芸術センターなど、世界中の公共スペースで見ることができる。
Installation view of Calder: Un effet du japonais, Azabudai Hills Gallery, Photo: Tadayuki Minamoto
アレクサンダー・カルダーによる東京での約35年ぶりとなる個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」が麻布台ヒルズ ギャラリーで、5月30日から9月6日にかけて開催されている。アメリカのモダンアートを代表するカルダーの芸術作品における、日本の伝統や美意識との永続的な共鳴をテーマに開催される本展は、ニューヨークのカルダー財団理事長であるアレクサンダー・S.C.ロウワーのキュレーションと、Paceギャラリーの協力のもと、カルダー財団が所蔵する1920年代から1970年代までの作品約100点で構成され、代表作であるモビール、スタビル(静止した抽象的な作品)、スタンディング・モビールから油彩画、ドローイングなど、幅広い作品を見ることができる。同時にこの展覧会は、麻布台ヒルズとPaceギャラリーのコラボレーションを記念するもので、Paceギャラリーは今年9月より麻布台ヒルズ内に常設スペースをオープンする。
Installation view of Calder: Un effet du japonais, Azabudai Hills Gallery, Photo: Tadayuki Minamoto
本展の会場デザインを担当し、長年のカルダー財団の協力者でもあるニューヨーク拠点の建築家、ステファニー後藤は、カルダーが同時代の偉大な建築家たちとコラボレーションしていた精神にならい、3:4:5の直角三角形の幾何学にもとづいた設計で、日本建築の要素や素材をエレガントかつモダンに展示空間に取り入れた。茶室や能舞台を想起させる正方形の展示室は、ギャラリーの中央に位置し、空間に対する認識は、空間ばかりか時間の意味でも「中断」を示唆する「間」によって強められ、木、紙、漆喰など日本の伝統的な素材がこの中断や不在の感覚をいっそう強調する。また、パビリオンの天井の透明なパネルから差し込む光は、ジグザグに張り出した庇のような線を描き、身体的で触感的な要素を加えている。
Installation view of Calder: Un effet du japonais, Alexander Calder, Fafnir, 1968, Private Collection, Rendering of exhibition, Courtesy: Stephanie Goto Architecture
会場に入るとまず来場者を迎えるのは、名古屋市美術館が所蔵する《Fafnir-DragonⅡ》(1969年)と姉妹関係にある、北欧神話に登場するドラゴンの名が付けられた巨大なスタンディング・モビール《Fafnir(ファフニール)》(1968年)。動物と行動。この2つの言葉はカルダーの芸術において密接な関係にある。『…動物には常に絶え間ない動きの感覚がある。動物をうまく描くにはこれを念頭に置かなければならない』と生前、カルダーは語っている。
続きを読む ...