ヒロミ・タンゴ

PEOPLEText: Ayumi Yakura

メルボルンのフローリー研究所と協力して、健康科学と芸術のコラボレーションにも取り組んでいらっしゃいますね。なぜこのようなプロジェクトが生まれたのでしょうか?成果についてとても興味があります。

Wrapped」はクイーン・ビクトリア・マーケットを場所として探索し、マーケットの体験に関連した作品でそれに答えるというプロジェクトで、多くのアーティストが招待されました。神経科学に何年か興味があって、期間中作品制作のために、健康科学の専門家たちに話を聞きました。その中でメロボルン・ビエンナーレ・パブリック・アートラボの協力で、エンマ・バロウズ博士と働く機会を得ました。バロウズ博士はフローリー研究所の神経科学者で、子供の脳の発達に関心を抱いています。様々な色、テクスチャ、音やにおいから、健康的な食べ物から摂取する実際の栄養まで、マーケットで得られる感覚的体験が、多くの方法で「ブレイン・フード」になり得るということを考えていきました。

異なる脳のエリアを表すパーフォーマンス的な彫刻を制作して、人々が会話を通してプロジェクトに参加するようマーケット内を動き回りました。パブリック・トークやバロウズ博士とユングファー博士(アートによる精神衛生に強い関心を抱いている精神科医)のエッセイを載せた出版物も刊行しました。

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Hiromi Tango, Wrapped, Commissioned by City of Melbourne for Queen Victoria Market as part of Melbourne Festival, 2016

パートナーのクレイグ・ウォルシュはどのようなアーティストですか?共同で行われているご活動についても教えてください。

いろいろな面で、クレイグは客観的に観察する人です。質問をし、資料にし、それらをより大きなスケールでコミュニティに反映します。ストーリー表現にビデオとプロジェクションをよく利用し、私のアプローチと互いに補足しあっています。共同制作の最もいい例は「Home」というプロジェクトです。クレイグはコミュニティの人たちに「Home」についてのアイディアや、彼らにとってそれが何を意味するか、インタビューしビデオで撮影しました。オーストラリアの僻地にあるアボリジニのコミュニティから、韓国の光州まで、様々なセッティングでいくつかバージョンを制作しました。その過程において、それらのコミュニティの人たちに「Home」を象徴する布を寄付してもらい、それらをビデオポートレイトが上映されるスクリーンに縫い合わせました。このように、微妙なニュアンスで幾層にも重なりあうプロジェクトを創るために、私たちの全く違うアプローチが一緒になって共通のゴールに向かい機能しています。

これまでに文化の異なる様々な国の美術館や国際展で作品を発表されていますが、印象的な出会いのエピソードを一つ教えていただけませんか?

私のビジョンを形にしようとする責任感、子供たちの視点がとても注意深く考慮されている点、NUSダンス・アンサンブルのパフォーマンスに対する子供達の反応など、シンガポール美術館と仕事をした経験は、これまでで最高でした。

これから挑戦してみたい事や、活動のご予定があれば教えてください。

現在ブリスベンにあるクイーンズランド脳科学研究所と非公式のコラボレーションを始めたところです。神経科学の研究者たちから学んだり、発展させたい作品についてフィードバックをもらったりしています。新しい作品やアイディアを発展させるため、こういったレジデンスプログラムにもっと時間を割けるようになったらいいですし、アートを通じて実験や探索をできる自由やインスピレーションを模索しているところです。

また、異文化の中で暮らす日本人であることの意味など、自分の文化的背景を探ることにも関心があります。過去20年間は、オーストラリア人になり同化することに重点を置いていました。最近では、自分の原点が何で、文化的アイデンティが自分の個性や芸術表現にどんな影響を与えたのか、日本文化や習慣に改めて興味を抱いています。

アートに興味を持った人がオーストラリア旅行に行くとしたら、おすすめの場所はありますか?

オーストラリアには素晴らしい美術館やギャラリーがあるので、どこから始めたらいいのかもわかりません。ゴールドコーストエリアに住んでいるのですが、ブリスベンは90年代からアジア・パシフィック・トリエンナーレを開催しています。さらにクイーンズランド近代美術館(QAGOMA) も活気があるし、ダーウィンやキャンベラにはアボリジニアートの素晴らしいコレクションがあります。7月にはケアンズ先住民アートフェアが開催されます。個人的には西オーストラリアやオーストラリア中央部または北部を訪れて、ダイナミックで驚くような自然と景観を経験することがおすすめです。私自身も今でもオーストラリアの文化や景観を学んでいるのですが、まずはその景観を実際に自分の目で見ることが、固有のアートを理解する上で不可欠だと感じます。

Text: Ayumi Yakura
Translation: Shoko Atsuchi

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