長谷川 愛

PEOPLEText: Aya Shomura

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第19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」長谷川 愛 © Ai Hasegawa

このたびの受賞作「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」が生まれた経緯を教えて下さい。

ロンドンに数年住んでいたのですが、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア)の方々が普通に暮らしているわけです、隠したりせずに。道でも公園でもレストランでも普通に仲良くしてます。友人にも結婚同然のカップルも普通にいるわけです。でも日本に帰国したら、途端に彼らが見えなくなってしまう。

数年前、結婚しているゲイのカップルと「子供どうする?」という話題の時に、彼らが「レズビアンの友人カップルに産んでもらうのもありだね」という話をしていて「彼女と君だったらかわいい子が生まれるよ!」とか話していたのですが、彼ら二人間に生まれる子供の想像の話は出てこなかったのです。もしかしたら、彼らの間の想像の子供は想像してたとしても口に出さなかっただけかもしれません。家に帰宅して思い返したのですが、想像の子供は、想像すれば誕生してしまう、そしてDNA情報からシュミレーションだってできることに気づきました。

その後、iPS細胞関連の本を読んでいたら、将来同性間でも子供を作れるかもしれない、しかしその技術利用には倫理の壁があり、実用までは時間がかかるだろうと書いてありました。倫理の壁、そもそもこの技術を使ってはいけない理由が自分の中で思いつかなかったので、皆に問いかければ教えてくれるかもしれないと思ったのもあります。

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第19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」SNPsデータ, 長谷川 愛 © Ai Hasegawa

医療の“倫理”について一体誰がどのように決定をするのか気になって、例として未婚の女性の卵子凍結保存の是非について調べていくと、どうも「社会通念」とかいう、モヤっと形のない物に照らし合わせて決める、などと書いてあって「そもそも社会通念をどこからどう切り取っているのか?」そして「実際誰が決定しているのか?」というと、一部の研究者だったりする。日本だとおじさま達がメインですね。私達妙齢の女性にとって大事なことなのに、全然当事者に訊いてないし、ほとんど決定権が無いことが衝撃でした。

この「(不)可能な子供」という作品は、将来同性間でも子供を作れるかもしれないという技術が開発された時に「誰がその使用の是非を決めるのか?」という疑問やその権利を、アートやデザインの力でオープンにできたらなと思って、できるだけ多くの人に観て、考えて、議論してもらうことを目的にして制作しました。それで多くの人に観てもらうため、NHKさんにドキュメンタリーを撮って放送してもらうことにしました。ある意味、白熱教室のマイケル・サンデル教授が授業でやっている議論を、アートでしたかったのかもしれません。ちなみに彼は生命倫理の本を出しています。凄く面白くて、多面的に考える、問題点を洗い出して深めていく、ロジカルに考えるという事の気持よさを教えてもらいました。

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第19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」長谷川 愛 © Ai Hasegawa

メディア芸術祭に応募しようと思ったきっかけや理由を教えて頂けますでしょうか?

メディア芸術祭では情報科学芸術大学院大学の知り合いや友人が賞を頂いていたし、私の働いていたロンドンの会社も受賞していたので、長いこと虎視眈々と狙っていました。

本作の優秀賞受賞についてはどのように感じていらっしゃいますか?時代や社会、人々の意識の変化などを感じますか?

最近の日本は内向きで「出羽の守は嫌われる」と言うけれども、外に対する興味を失うのは自滅にしか感じられません。少子高齢化のためか、文化的にも、精神的にも新陳代謝が上手くいっていない気がします。日本はまだまだ保守的で、「アートが特に政治的な批評から離れようとしているのかな?」とも感じていたので、それなのに選んで頂けたので嬉しかったです。贈賞理由に書かれてありましたが、「審査会でも議論となった」というのはある意味最高の褒め言葉ですね。議論を促すためにやっているので。この作品はインタラクティブなデバイスなどを使わないため、メディア芸術祭にしては解りにくい作品ですが、理解して下さった審査員の方が、他の審査員の方を説得して下さったのではないかと読み取りました。

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