ZAKA(ザカ)
PEOPLEText: Hiromi Nomoto
『こんにちは。ZAKAと申します。私は正体を明かせません。匿名のアーティストとして扱ってくれるギャラリーを探しています。作品と企画書を添付します。興味ありますか?』このメールがドン・ギャラリーのチェン・シーシンに届いたのは、今からおよそ1年半前のこと。
今回の文章は上海で活躍する、あるアーティストについてである。ZAKA(ザカ)とは、30代の男性で、アート教育を受けたことがあり、上海で制作をしている。これ以外の情報は無い。もちろんポートレートも。
「プラセオジム、スペクトラム」, アクリルガッシュ、木片、既製の布, 1100 x 1220 x 60 mm, 2012 © 2007-2008 Don Gallery
ある日の午後、チェン・シーシンから急に連絡があった。2011年に上海環球金融中心で行ったシェル・エコノミクスというイベントで、金券を含むお金以外の“何か”とアート作品の交換が行われた。その時、SHIFTでの紹介とZAKAの作品「春」を交換したのだが、ZAKAから返答はなくそれきりになっていた。それで今回の展示のことを文章にしてはどうかとチェン・シーシンから提案された。
若手アーティスト数名が所属しているドン・ギャラリーは、復興中路の「黒石公寓」の2階にある。この建物は924年に建てられたもので、玄関上部にあるテラスから下りて来る階段が印象的だ。周りには租界時代の趣深い建物が沢山あるのに関わらず、この建物は際立っている。
展示風景 © 2007-2008 Don Gallery
ドン・ギャラリーに入るとチェン・シーシンが向かえてくれた。ZAKAの個展「Halo」は9月7日から始まった。「Halo」とは光輪のことだ。展示は平面作品と立体に分かれている。と言っても、平面作品はキャンバスの他に、木材やFRPを使っているので立体に近い。スペクトルをテーマにした作品では、既成の布を使ったキャンバスに木で作った立体を貼り、布の色に近い色を上から塗っている。線の太さ色、形の対比で構成されている。
重なっていて見えないが15個の立体が使われている 「疑惑(メラミン)」, FRP、アクリルガッシュ, 300 x 285 x 50 mm, 2012 © 2007-2008 Don Gallery
立体作品は、それぞれのタイトルになっている物質に対して、アーティストの目で表現されている。例えば作品「疑惑(メラミン)」では、メラミンとは2008年中国で問題になった物質であり、アーティストはその物質に対するメージをタイトルにしている。また、メラミンは化学式ではC3H6N6と表す。Cを表す形が3つ、Hを表す形が6つ、Nを表す形が6つあり、それらを自由に組んでいる。
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