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長谷川 愛

PEOPLEText: Aya Shomura

その作品について語った記事に「倫理と嫌悪の壁をどう柔らかくするか?」という課題に関心を寄せているとありました。“倫理と嫌悪の壁”の視点から「私はイルカを産みたい…」への反響はいかがでしたか?

フランスのカルチャーマガジン「バイス」にインタビューされた時はもう『イルカを産んで食べる!日本人変態女性!』みたいに書かれてしまって、大分酷い反響でしたね。フランス人に変態扱いされるというのも驚きで、もはや光栄でしたが。意外なところでは、カトリックのアイルランドで展示した時は、観た人の目がキラキラして笑顔だったことでしょうか。

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「私はイルカを産みたい…」2013 © Ai Hasegawa

アニメーター、キャラクター・デザイナー、イラストレーターとしての顔もお持ちだったようですが、メディアアートのアーティストとなった理由は何でしょうか?

アニメーターやイラストをやっていた時はもう結構昔で、その後ロンドンのオフィスでは、センサーやデバイスとネットワークでインタラクティブなプロジェクトのコンセプトを考えたりしていたのですが、結局お金があってプログラムさえできたら割と楽しい物は作れてしまう。自分がやらなくても他の人がやればいいということに気づいて、だったら自分からしか出ないものをやりたいなと思いました。

長谷川さんのプロジェクトは、写真やシミュレーターなど包括的に研究した資料でもあると感じるのですが、プロジェクトに取りかかる際の着想はどういったところから生まれるのでしょうか?例えば企業や別のチームから声がかかってスタートする、ということもありますか?

自分や友人の悩みなどが『どんな技術やサービスがあったら解決するだろうか?』とか考えたりすることが多いです。それから技術的にそれを可能にするにはどうしたらいいのかリサーチし始めて、色々な方にお話を伺ったり助力やお仕事を頼みます。今のところあんまり企業からお声が掛かることはない感じですが、お待ちしております!

このたびの受賞作「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」が生まれた経緯を教えて下さい。

ロンドンに数年住んでいたのですが、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア)の方々が普通に暮らしているわけです、隠したりせずに。道でも公園でもレストランでも普通に仲良くしてます。友人にも結婚同然のカップルも普通にいるわけです。でも日本に帰国したら、途端に彼らが見えなくなってしまう。

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第19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」長谷川 愛 © Ai Hasegawa

数年前、結婚しているゲイのカップルと『子供どうする?』という話題の時に、彼らが『レズビアンの友人カップルに産んでもらうのもありだね』という話をしていて『彼女と君だったらかわいい子が生まれるよ!』とか話していたのですが、彼ら二人間に生まれる子供の想像の話は出てこなかったのです。もしかしたら、彼らの間の想像の子供は想像してたとしても口に出さなかっただけかもしれません。家に帰宅して思い返したのですが、想像の子供は、想像すれば誕生してしまう、そしてDNA情報からシュミレーションだってできることに気づきました。

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第19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」SNPsデータ, 長谷川 愛 © Ai Hasegawa

その後、iPS細胞関連の本を読んでいたら、将来同性間でも子供を作れるかもしれない、しかしその技術利用には倫理の壁があり、実用までは時間がかかるだろうと書いてありました。倫理の壁、そもそもこの技術を使ってはいけない理由が自分の中で思いつかなかったので、皆に問いかければ教えてくれるかもしれないと思ったのもあります。

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第19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」SNPsデータ, 長谷川 愛 © Ai Hasegawa

医療の“倫理”について一体誰がどのように決定をするのか気になって、例として未婚の女性の卵子凍結保存の是非について調べていくと、どうも「社会通念」とかいう、モヤっと形のない物に照らし合わせて決める、などと書いてあって『そもそも社会通念をどこからどう切り取っているのか?』そして『実際誰が決定しているのか?』というと、一部の研究者だったりする。日本だとおじさま達がメインですね。私達妙齢の女性にとって大事なことなのに、全然当事者に訊いてないし、ほとんど決定権が無いことが衝撃でした。

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第19回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」長谷川 愛 © Ai Hasegawa

この「(不)可能な子供」という作品は、将来同性間でも子供を作れるかもしれないという技術が開発された時に「誰がその使用の是非を決めるのか?」という疑問やその権利を、アートやデザインの力でオープンにできたらなと思って、できるだけ多くの人に観て、考えて、議論してもらうことを目的にして制作しました。それで多くの人に観てもらうため、NHKさんにドキュメンタリーを撮って放送してもらうことにしました。ある意味、白熱教室のマイケル・サンデル教授が授業でやっている議論を、アートでしたかったのかもしれません。ちなみに彼は生命倫理の本を出しています。凄く面白くて、多面的に考える、問題点を洗い出して深めていく、ロジカルに考えるという事の気持よさを教えてもらいました。

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