シャナ・モールトン「ピクチャー・パズル・パターン・ドア」展

HAPPENINGText: Fuyumi Saito

ニューヨークをベースに活躍する女性アーティスト、シャナ・モールトンのインスタレーション展「ピクチャー・パズル・パターン・ドア」が、サンフランシスコのコンテンポラリー・アートセンターで特集された。シャナの作品は、消費文化がもたらす物質的豊かさと、精神的豊かさ、真に自由で人間的な生き方の関係を探る。

Shana Moulton02
Shana Moulton “MindPlace ThoughtStream” (video still), 2014, Courtesy the artist and Gimpel Fils, London; Galerie Gregor Staiger, Zurich; and Galerie Crèvecoeur, Paris

彼女のビデオ作品では、シャナはいつも「シンシア」という女性を演じる。シンシアは終始無言で、非常に人工的な環境の中で生活をしている。そしていつも、精神的な啓発や物理的に得られる心地良さ、「商品」を使用することで得られる癒しを追求している。今回の展示では、シンシアのユーモラスで遊び心に溢れた、そして、キッチュで、神秘的で、ポップで、スピリチュアルな要素が衝突しあう世界が、映像、音、体験型インスタレーションといったマルチメディアを用いて表現された。

展示会場であるアートセンターの2階ロビーには、脳波や血圧などを手掛かりに自分の体調を制御するバイオフィードバック・マシンが置かれていた。痛みを緩和する為の実験装置だ。人体の内的および肉体的な反応をモニタリングすることで、心をトレーニングし、人体をコントロールできるという仮説のもと作られたものだ。人々は実際にこのシステムが搭載されたソファに座り、手に装置をつけて自身の体の様子を知ることができる。

Shana Moulton04
Shana Moulton “MindPlace ThoughtStream” (video still), 2014, Courtesy the artist and Gimpel Fils, London; Galerie Gregor Staiger, Zurich; and Galerie Crèvecoeur, Paris

ソファに座ると、正面のビデオ画面には、シンシアが「マインドプレイス・ソートストリーム・バイオフィードバック・システム」にプラグインする様子が映し出される。バスタブにつかっているシンシアの体の機能が計測され、音と光で状態を知らせる。徐々に瞑想の世界へと入って行くのだろうか、彼女の頭の中の様子をビジュアル化したような、脳内の迷路をさまよう映像がバスルームのタイルに映し出される。

『ようこそ、シンシアの世界へ』。ここが不思議の世界への入り口なのだ。ビデオを観ながら、ソファに座り半信半疑でシステムを試してみる。最初は心拍数も早く、オレンジ色の電気が点滅する。するとソファの背後から水蒸気のような湯気が立ち始める。意識的に自分をリラックスさせようと呼吸を和らげてみる。電気は徐々に緑色へと変化していく。心で体をコントロールする体験だ。

人工頭脳学からデカルトの心身二元論(心と体は別物であるとする)まで、長年人間が考えてきた文化的、哲学的仮説が、この小さな器機には詰め込まれているという。シャナの作品において、物は役者であり、ある意味二重性を持っている。物そのものと、その存在を通して人間に作用する役割だ。それは心と体の関係に見ることができる二重性でもある。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE