小林俊哉個展「取り返しのつかないものを取り戻すために」

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

ラウンジに展示された3枚の新作《取り返しのつかないものを取り戻すために – 希望》」は、花言葉のように深読みされてしまう要素を排除して、特定の品種ではなく、植物そのものを抽象化した作品だ。黒地に、生命力を感じさせる黄緑色の太いライン、そして画面いっぱいに咲く花が、見る人へ向けてまっすぐに、全ての花びらを開いている。黒い花の中に少しのピンクが点在している作品、あるいはピンクの花が満開の作品など、3枚それぞれが、絶望の黒から見出された希望の色を湛えているようであり、一枚一枚が、ある全体の「部分」として描かれたものだ。

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個展タイトルにもある「取り返しのつかないもの」とは、震災で失われたものに限らず、小林の思う日本が、取り返しのつかない方向へ進んでいることを意味している。社会の仕組みや、人々の意識の在り方など、広い視野を持って様々な現状を見据えようとしても、常に全体を把握することは難しい。そこで「描いた部分を繋ぎ合わせていくと、全体としてどう見えるのか」を試みて制作が続けられているという。描いていくうちに全体が十数枚にもなる作品もあれば、一枚で完結した作品もあるといい、その全貌を想像せずにはいられない。

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小林は『なぜ絵を描くのですか』との問いに、『新しい自分を探して、新しい自分になりたいから』と答えた。現状に満足することなく、日々の創意を日々形に表すことで「次に進める」。そして作家自身が作品へ投影されていくことで、作品から説得力が生まれるという。

取り返しのつかないものは、取り返しがつかないだろう。しかし、だからこそ本展が持つ「取り返しのつかないものを取り戻すために、新しい価値観や希望を持って前へ進んで行きたい」という意思を尊く思う。希望として描かれたピンクの花は、黒の中に描かれているからこそ、目を閉じた暗闇の中にも鮮やかな記憶として蘇る。多くの人々に訪れ、目にしてほしい作品だ。

クロスホテル札幌では、2007年のオープン以来、「ART X」(アートクロス)と題して館内でのアート作品の展示などを行っており、2011年からは、SHIFTとのコラボレーションにより道内作家の展覧会を行い、札幌から世界に向けて発信している。本展は、まちなかアート・クロス・エディションとしてSHIFTがキュレーションを担当する展覧会の第11弾。まちなかアートとは、街中にアートが溢れ、気軽に楽しめる環境づくりを目指す札幌から展開中のプロジェクトでギャラリー、作家、店舗が一体となり、アートのある日常をつくるというもの。

なお、ミートラウンジの貸切予約状況は、まちなかアートのTwitterFacebookで確認することができる。

小林俊哉個展「取り返しのつかないものを取り戻すために」
会期:2014年3月22日~5月31日
会場:クロスホテル札幌
住所:札幌市中央区北2西2
主催:クロスホテル札幌(企画部 011-272-0051)
キュレーション:クラークギャラリー+SHIFT
協力:まちなかアート、株式会社正文舎
http://crossmet.jp/sapporo/

Text: Ayumi Yakura
Photos: Yoshisato Komaki

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