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TOKYO FRONTLINE 2012

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

今回、とてもパワフルな風を感じたのは台湾より参加の Galerie Grand Siecle(ギャラリー・グランデ・シエクル)の一角。ディン・チンチュン(丁建中)の「空いている部屋」シリーズは、電化製品から発される不穏な音と共に光が回転する様子を写した映像作品。

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「Vacant Room」 © DIN Chin-Chung Photo: Yu Miyakoshi

荒涼としたイメージの奥底から感じられる原始的な振動が心地よく、不思議な映像に時間を忘れて見入ってしまう。この映像は長回しで撮影されたものではなく、回転する光を撮った画像を1000枚以上つないで作られたものだという。洗練された作品が並ぶ中、「空いている部屋」のいい意味で荒削りなところが残された表現は、ストレートに心と体に響いてくる。

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「Ghost in the Phone」 © CHEN Pin-Hua Photo: Yu Miyakoshi

同じく同ギャラリーから紹介されていたチェン・ピンファ(陳斌華)の「ゴーストの電話」は、iPhoneに登録された偉人のイメージを写した作品だ。アーティストは、自身の電話帳に記されている既にいなくなった人の連絡先を眺めていると、徐々に昔の記憶が浮かんで来る、という体験に基づいてこの作品を作ったという。頭の中に度々浮かぶ人物の情報を iPhone の電話帳に入れ、暗い部屋に置いて電話をかける。そしてその着信記録を、邂逅の記録として写真に残す。チェンビンファは歴史を学んだ経験もあり、現代の装置を、記憶を表現するものに利用してしまった。この作品を通して見ると、写真が現代的なイコンに見えてくる。

Maki Fine Arts(マキ・ファインアーツ)では、「六本木クロッシング 2010」で発表された「告知―森」が印象的だった照屋勇賢の最近のシリーズを発見。照屋氏は現在ニューヨークにスタジオをかまえ、群馬県の前橋市で行われている「未来の芽 里親プロジェクト」に参加したり、自身の故郷である沖縄の工房と連携し制作をしたりと、日米を横断した活動を行っている。最近のシリーズ「Heroes」では、沖縄に伝わる紅型染め(びんがたぞめ)という染色技法を用いて、沖縄民権運動の瀬長亀次郎や、バラク・オバマ、アメリカ原住民のジェロニモといった、自身や誰かにとっての「英雄」を描いている。照屋氏の作品は色鮮やかで一見楽しげだが、奥に社会的なメッセージが潜み、アーティストとして真摯に表現していこうという姿勢が伝わって来る。「Heroes - ウルトラマン」照屋勇賢 Photo: Yu Miyakoshi

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「The Waterfront」シリーズ © Yoi Kawakubo

スペインに生まれ、一般大学を出ていながら、学生の頃に世界一周旅行に出たことがきっかけで写真を撮りはじめたという、今回 hpgrp GALLERY TOKYO から出品されていた川久保ジョイ。その経歴に想像をかきたてられてしまったせいもあるのだが、川久保氏の写真には、自由を選ぶ人ならではの視点で捉えられた「ここではない何処か」が写されているように思う。それは還りたい何処かであり、現実から飛び立っている何処かの風景のように見える。また、どの写真を見ても、地球という惑星の一部であるということを感じさせるような、世俗の時間と切り離された静謐さがある。

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