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内沼晋太郎

PEOPLEText: Yuko Miyakoshi

1980年生まれ、ブック・コーディネイター/クリエイティブ・ディレクター、本とアイディアのレーベル「numabooks」代表、内沼晋太郎。ただ本を並べるだけではない、ちょっと印象に残る手法で本を見せる。内沼さんの肩書きはブック・コーディネイター以外にも、エディター、プロデューサー、ファシリテーターなど、実に様々。最近ではグラフィック/アートコレクティブ、NAMとのコラボレーションなど、アート方面での活動も記憶に新しい。内沼さんのお話は、何かが生まれる時のわくわく感に満ちている。確かに、その感覚はアートと親和性が高いのかもしれない。今回はその内沼さんの発想の秘密にせまるべく、お話を聞かせていただいた。

内沼晋太郎

フリーでお仕事を始められるようになったきっかけから、最近のお仕事について教えてください。

大学時代にユニットを組んで色々な活動をしていまして、そこでは雑誌を作ったり、クラブイベントをやったり、メディアアートのような作品を作って展示したりしていました。それから大学卒業後に一回就職をするんですが、その会社を2ヶ月で辞めまして、長距離の運転手のアルバイトや、テレアポのクレ—ム処理の仕事なんかをしつつ、やっぱり何か本のことがやりたくて、千駄木の往来堂書店という、小さい町の本屋さんでありながら個性もあるお店として業界では有名な本屋さんでアルバイトを始めました。その頃に「ブックピックオーケストラ」っている名前の古本ユニットも始めたんです。そこで古本の中身を見せない「文庫本葉書」というの作ったり、古本が袋に入って並んでいる本屋「encounter.」などをギャラリーや展覧会に呼ばれてやっていました。「encounter.」をやった時は、実際に横浜で1年半お店をやっていました。

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「文庫本葉書」クラフト紙で包まれた古本の裏には本の中の気になる一節が印刷されている。表面は葉書としてそのまま使うことができる。

その辺りから「本と人との出会い」ということについて考えていて、クラブとか現代美術の界隈とかで、普通とはちょっと違う本の売り方や、本との出会い方を作品にする、というようなことをやっていました。それでそのブックピックオーケストラをやっているうちに、だんだんと僕個人への依頼が多くなって来たんです。きっかけは原宿で5年半やっていた「TOKYO HIPSTERS CLUB」(2010年12月閉店)という、僕に一番最初に本のセレクトを依頼してきてくれたお店でした。洋服屋さんなのですが、ギャラリーやカフェもあって、その洋服のフロアで本を扱いたいということで本のコーディネイトの仕事を受けました。それをきっかけに本当に色々な出会いがあって、そこから「本と人との出会い」を考える作品やプロジェクトと平行して、アパレルや雑貨屋さん、CD屋さんといった異業種の中に本の売り場を作るという仕事が始まりました。

それから段々と今に至るという感じでして、さらにここ2、3年は出版業界のコンサルティングの仕事が増えてきています。出版業界というのは、別の小売り業界と比べると特殊な業界なので、洋服や雑貨とは商慣習がまるで違うし、長年それでやってきているので小売店としてのあり方が古い。僕は他の業種で本を売ったり、本の可能性を広げるような活動を通じて頭がやわらかくなっているのでそれを生かして、本の流通をやっている会社の顧問や、地方の書店さんのコンサルティングをしたりしています。

あとは電子書籍の仕事ですね。僕は最初から本と人との出会いっていうのがずっとテーマで、自分が一貫してやりたいのは人に本を面白がってもらうきっかけを作ることなんですよ。それはもう電子も紙も関係ないんです。電子書籍はこれからどんどんスマートフォンで買えるタイトルが増えていくと思いますが、今まで本を読まなかった人たちが、何かがきっかけで本を読むようになるしかけというのは、ただ売り場を作るだけじゃダメだと思うんですね。そこのところで僕ができることがあると思っていまして、実際に電子書籍の売り場作りや、ビューアーのインターフェイスや機能についてのディレクション、端末のプロモーションのためのコンテンツ作りという仕事などが入りつつあります。

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