「ミニマム インターフェース」展

HAPPENINGText: Mariko Takei

ミニマム インターフェース展は、YCAMでは珍しいグループ展としての企画とのことですが、本展を行う経緯や何か特に工夫を凝らしたことなどエピソードがありましたら教えて下さい。

新作委嘱による個展が多いYCAMにとっては、グループ展という形式はやや珍しいかもしれません。インターフェースを取り巻く現代の状況は日々変化しているので、今回の展覧会は、対象に対して多角的なアプローチを行なうべく、アート、デザイン、建築など複数のアーティストが参加するグループ展という形式を選択しました。
今回の展覧会では、もう一つメタレベルのインターフェースについても同時に考察しています。美術館やアートセンターが社会において担っている役割と、展覧会というイベントの形式についてです。

そのことを示す一例として、展覧会のナビゲーションデザインをリーディング・エッジ・デザインに依頼し、公開しています。リーディング・エッジ・デザインには、アートセンターにおけるナビゲーション機能自体を「展覧会のインターフェース」と見なして提案してもらうよう、依頼しました。展覧会では、展示された作品から鑑賞者に対して一方的に情報が流れてくる、ということはありません。鑑賞者の積極的かつ能動的な鑑賞によって、身体的/思考的なインタラクションが誘発されることで、作品に対して意味が与えられ、並べられた知識による理解だけでないより豊かな鑑賞が成立していきます。今回改めて展覧会の企画中に、キュレートリアルチームやほかのYCAMスタッフ内で、展覧会に対する鑑賞者のあり方を見直してみました。鑑賞者に能動的・積極的な鑑賞行動を誘発するための仕掛けとして、最初のナビゲーションに、通常には存在しない驚きや触覚的な感覚を位置づけてみようと考えたのです。

ミニマム インターフェース展
「on the fly」
グラフィックデザイン:good design company
ナビゲーションデザイン:LEADING EDGE DESIGN

Suicaの開発でも知られる、リーディング・エッジ・デザインが展覧会場のインフォメーションシステムを構築されているそうね。具体的にどのような試みがなされているのでしょう?

「フライヤー」という展覧会の情報告知には当たり前となったツールを、まずは見直し、情報をとりだすための謎の鍵のような存在として位置づけました。展覧会が「ミニマム インターフェース」ですから、デザインも最低限の言葉の要素しかない、けれども何かそこには不思議な存在感があるというものにしたのです。

会場入口付近に設置されたテーブルの上に、この展覧会フライヤーをかざすと、そのフライヤーの位置に対して、テーブル上部のプロジェクターから映像が投影されます。精緻な形態認識技術によって、フライヤーをどのように動かしても映像がトレースされます。そして、フライヤーに開いている16個の穴を、指で押さえることによって、それぞれの穴に対応した情報(展示作品の情報や、展覧会コンセプト、関連イベントなどのビデオ、静止画、文字情報)が、サウンドとともに表示されます。また、穴を抑える指先から、作品の設置場所へ向けて矢印が延びるアニメーションが描かれ、その先にある作品キャプションに対して照明が当たり、作品の位置を明示します。この一連の動作が、作品鑑賞への誘導となっています。穴を押さえると同時に、人の声をサンプリング加工した特殊なロングトーンのサウンドも響くようになっています。

前途の会場全体のナビゲーションシステムに加えて、新たに構築しているというグラフィックデザインについても教えて下さい。

グラフィックデザインは、good design companyが手掛けています。リーディング・エッジ・デザイン、YCAMを含む3者でのオリエンテーションにおいて、「そもそもインターフェースとは何だろうか?」という疑問を出発点にして、原義である「境界面」という存在を意識化し、その向こう側とこちら側をミニマムに繋ぐ単純な「穴」(細胞的な「孔」ともいえるかもしれませんが)のあいたフライヤーというアイディアができ上がりました。このフライヤーには、見ての通り、ある意味過激と言ってもいいほど、必要最低限の文字情報しか書き込まれていません。しかし、フライヤーを2枚つかって、この穴に隠されたギミックを探りあてると、ついそのことを人に話をしてみたくなります。その仕掛けとは、タネあかしになりますが、「フライヤー2枚の表と裏を、転地逆に重ね合わせると、16の穴に展覧会タイトル「ミニマム インターフェース」が見えてくる」というものです。さらにこれを会場へ持ってくると、ナビゲーションのテーブルで情報を引きだす「鍵」となるわけです。こういった「発見や行動を誘発する仕掛け」自体が広報ツールとしてのフライヤーの存在の魅力を増してくれることを期待しています。メッセージ情報としての文字をむやみに増やすのではなく、逆に機能をミニマムに限定することによって、人間にとって最も原初的な紙というメディアの持つ可能性を、最新のメディアとの組み合わせによって違ったものに見せようとしたわけです。このフライヤーは、展覧会そのもののコンセプトを表現したグラフィックと言うことができますね。

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