ソナー 2005

HAPPENINGText: Peta Jenkin

それは良く晴れた日で、このままバルセロナでは暖かい天気が約束されていた。私たちの飛行機が滑走路に並び、出発のポジションにつく。隣に座った女の子が大きなクロスワードパズルの本に没頭していて、その様子は、その時間を過ごすためなら何でもできる海辺の長い休暇を連想させた。しかしこれから私たちが向かう場所では、まるで荒れ狂う牛のごとく時間が早く過ぎるであろう。ソナー・フェスティバルで、凝縮されたエンターテイメントの三日三晩を過ごすのだ。DJ、VJ、ライブにロックバンド、レコードレーベルのショーケース、ニューメディアアート、シネマ、それにサンミゲール・ビールを楽しめる。

今年12回目の開催を迎えるソナーは、ミュージックやアートのトレンドを追い、シフトし続けてきた。現存する何千ものフェスティバルの中でも、最も将来性があって根強い大黒柱の一つとしてすでに充分な成長をとげている。一体どのように成り立っているのか?キレのあるマーケティングや、戦略的なイベントプラン、ミュージックやアートシーンで活躍する “重要な” アーティスト達との関係への投資など、全ての要素のコンビネーションが必要だ。こんなに沢山のアーティストが繰り返し参加し、こんなに沢山の世界中の客がそのセレクションを味わいに訪れる理由は、何よりもソナーの持つ信憑性である。

ソナーは、小奇麗でスマートな感覚が好きな人のためのフェスティバルだ。ここにぬかるみは無く、バルセロナのスーパーホワイトなバルセロナ現代美術館の清潔さと芝生による、人工的な環境が整っている。夜の会場用には巨大な工業用ウェアハウスが並び、その球体から生み出される最新のオーディオビジュアルを眺めるのには理想的な場所だ。


The busy courtyard thoroughfare

そんな “スマート” カテゴリーに確実に良く合う人と言えば、常にソナーのお気に入りであるマシュー・ハーバートだ。もう何年もの間、どういうわけか私の彼に対する評価は賞賛のコーラスに値しないのだが、彼のパフォーマンスはこのフェスティバルの幕開けに相応しい選択のようだった。

最初のミュージックと美食プログラムに参加しようと、ハーバートのファン達はエスセナリオ・ホールを埋め尽くした。これは食とミュージックを一緒に提供するプログラムで、ステージ上のミュージシャンに合わせてシェフが登場する。食との関係を強調するのは、スペイン人にとって良くある試みでは無い。しかし私は、テレビ番組に登場するクッキングショーのスタイルでは無く、アルモドバルの90年代のヒット映画「ハモン・ハモン」のように、2つの大きなハムの足をめぐって必死の戦いが行われるのを願った。


Mathew Herbert tucking into a chicken leg, and wincing to the raw onions being sliced nearby

ハーバートは、まるで客など存在しないように振舞いながら、いくつかの塊をこね回し、何にも合わないような支離滅裂な衝撃のビートを作り出した。あまりパッとしないステージ上のパフォーマンスと、繰り返される機械音やグチャグチャという音は、私がハーバートに対する興味を失うのに充分だった。このパフォーマンスの一番の見せ所は、食の思考として、人間の脳に見立てた猫のスキャンをしたビデオ投影で、実際に生の肉がスライスされていた。

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