ソナー 1999
HAPPENINGText: Matt Hanson
斬新な音楽とマルチメディアアートのインターナショナルフェスティバルと銘打ったソナーは、ヨーロッパの革新的で実験的なエレクトロニックミュージックの最も活気のあるフェスティバルへと成長した。
6年目を迎える今年は、クラフトワークやジェフ・ミルズなどによる独創的なパフォーマンスや、イアラ・リーのモジュレーションズなど、めったに見られないフィルムが上映された昨年のイベントに引き続き、期待に応えるものが沢山あった。ソナーのメイン会場となったバルセロナ現代文化センター(CCCB)は、バルセロナ市街の中心に位置し、ゾクゾクするような活気に満ちた雰囲気で溢れていた。
6月17日から19日までの3日間で3万人を超える観客を動員し、世界中からミュージシャンやDJが集結し大評判となったと共に、スペイン国内のエレクトロニックミュージックシーンを活気づけた。CCCBの昼の部のミュージックステージとなったソナー・ラボと、夜の部のビーチクラブの開催地ソナー・クラブはエレクトロニックフュージョンなどスタイルに関係なくフィーチャーし、絶大なリアクションを巻き起こした。
1999年のオープニングナイトの主役を務めたのはオービタルで、そのパフォーマンスは今年のソナーの唯一の特権である、アーティストとコマーシャルのクロスオーバーとなっていた。リッチー・ホゥティンや池田亮司などによるパフォーマンスは、ソナーが純粋なエレクトロニックなフォームとサウンドスケープと非常に相性がいいということを表していた。
どのパフォーマンスも時には挑戦的すぎるものだったが、プログラミングの断固とした本質を表している。もっと分かりやすかったものは、BANGALOWや、LEAF、FAT CAT、ELEFANT、MUTEなどの革新的なレーベルによる最新リリースのプレビュー。夜の疲れを癒すために絶対必要な午後一番の昼寝タイムには最適だった。ジャパニーズテクノイズも地下のコンサートホールで繰り広げられていた。
音楽関係の動画やマルチメディア、インスタレーションは、独特で実験的な作品のフェスティバルのビジョンを膨らませる強烈な呼び物となっていた。これらの作品のほとんどは地元バルセロナ出身のアーティストの作品をフィーチャーしていた。そこでは、ウェブアートのスター、 JODI(バルセロナ在住)や、バサバ、ウェブの扇動者 NSQ、スペインで最もスタイリッシュな雑誌「AB and FLORIDA」のアートディレクター、セルジオ・アイバニーズなどの作品を見ることができた。
熱狂的なライブミュージックのスケジュールでは、休息する暇もなく、ソナー・シネマの音楽をベースとした動画のエレクトリックセクションでは、最新のデジタルトレンドやアーティストを見ることができた。僕達も、かなりエキサイティングな作品を紹介することができた。「Sneakers: Size isn’t Everything(スニーカー:サイズだけが全てじゃない)」というONEDOTZERO3でも公開されたスニーカー信仰についてのドキュメンタリーフィルムを持参したのだ。
その他のハイライトは、巨匠CYLOBの新しいビデオや、スウェーデンのDJ/VJクルーのフィルム、ダムタイプのライブパフォーマンスのビジュアルを収録したもの、ファーマーズ・マニュアルとコラボレートしたSKOTの作品など。
以下は個人的に注目したもの5つ。
1. THE USER:建築家トーマス・ショウ・マッキントッシュと、作曲家エマニュエル・マダン。14のドットマトリクスプリンターを調整してユニークなコンサートを奏でていた。旧式のテクノロジーの最高の使い方。
2. 池田亮司:ジャパニーズミニマリズムの頂点。簡素で精密なサウンドが見事な音のパフォーマンスとなっていた。
3. ルーダー&ドルマイスター:12インチリミックスの現代の巨匠2人が合体。彼ら自身のG-STONEレーベルからウォール・オブ・サウンド、トーキン・ラウド、ニンジャ・チューン、SSLまで。
4. チャプスイ:スペイン出身のスクラッチ、サンプリング、ブレイクビーツで、地元出身のアーティストが何ができるのかを示していた。
5. プラスチックマンことリッチー・ホゥティン:ホゥティンの不規則な振動が、僕のこのフェスティバルに対する失望のきっかけとなったが、彼がその夜の彼自身の欲望に正直すぎたか、または既成のビジュアルに対する冒険心が欠けていたのだろう。
他の国や街がソナーのやり方に匹敵するフェスティバルを開催することを望んでいるようだ。彼らは正しいことをやっているに違いない。しかし、先進的なミュージックフェスティバルは、得た成功に満足してそれ以上の努力をしないようなことにならないように、気を付けなくてはならない。名声や評判というものは簡単に無くなってしまうものだから。プログラミングエリアでは、改善が必要なものも幾つかあったし、年々それを繰り返さないようにしなければならない。大したことではないのだが。ソナーは最も新鮮なフェスティバルの一つだ。詳細で斬新でアイディアがある。僕のたったひとつの後悔は、どういうわけかビーチでのパン・ソニックの即興パーティーを見逃してしまったこと。でも来年もあるさ。
Sonar 1999
会期:1999年6月17日(木)〜19日(土)
会場:Centre for Contemporary Culture, Barcelona (CCCB)
住所:Carrer de Montalegre, 5, 08001 Barcelona
https://www.sonar.es
Text: Matt Hanson
Translation: Mayumi Kaneko