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トランジット展

HAPPENINGText: Gisella Lifchitz

14人のメンバーからなるグループが、ブエノスアイレスのカルチャーシーンに現れた。彼らは、レコレータ文化センターという場所の真っ白な壁に、まるでそれぞれが目的地までの道のりを知り尽くしているかのように作業している。ある人は、湿気のために壁にできたしみのまわりに紙を貼付け、ある男の人はペイントされたスプーンとプラスチックの眼鏡と戯れながら、床で超現実的な印象を与える何かを作っている。また他の人は、壁にドローイングを投影して何か作業をしている。2人の女性はブエノスアイレスで1日中撮り歩いた写真について意見交換をしている。またふとすると、小さな彫刻や写真、絵を持った人がやってきた。それほど大きくはないその部屋に、この全てがあった。それにも関わらず、そのスペースはわりと大きく見えた。カラフルで明るく、今にも独り言をはじめそうなアート作品があるからだろうか。

グループのメンバーでアルゼンチン人である、ガブリエル・グライマンがこのメンバーをここへ連れてきた。彼自身、画家であり、この場で作品を展示しているアーティストだ。彼を含むメンバー6人にお話を伺った。

どのようにこのグループの活動は始まったのですか?

ガブリエル:僕達はある友人の家で開かれた、イタリア料理のホームパーティーに招かれ、同じコースで学んでいた僕らはすぐに仲良くなったのです。僕らはその頃、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズでファインアートを勉強していました。その流れで、展覧会を開こうというアイディアが浮かび、2月にちょうどこの場所での展覧会に招かれたので、彼らを呼び集めました。

もともと友達だったのですか?

サスキア:友達にならざるを得なかったと言ったほうが正しいかもしれない。

シグビョルン:そうだね。それほどスペースもなかったから、お互い寄り添うように作業していたね。

それぞれの作品について教えて頂けますか?

シグビョルン:僕の作品は、インスタレーションとペインティングです。コンセプトは「自然」。アートというフィルターを通した自然への視点を表現したいと思っています。この美術館で現在展示している作品は、一つ一つ小さなドローイングを壁に投影したものです。ペンの軌跡を大きなスケールで見せたいと思い、こういう手法をとりました。ペンで描く絵は、風景を変化させながらも、とても正確に描くことができます。ある場所を別の場所へ持って行くようなものです。


Sharone Lifschitz and Martina Jenne, Daying II, 2004

全体的にこのグループの作品は、「ある場所を別の場所へ持って行く」という考え方が根底にあるのですか?

ガブリエル:ええ、そうです。彼が今言ったように。

サスキア:僕の場合は、「場所」というよりも「ペルソナ」です。ロサンゼルスのようなスタイルですが。「僕の場所」=「どこでもない場所」なんです。グループのメンバーはほとんど、このような考えを持っています。僕達は旅をしていて、おそらくこの旅は人生を通してずっと続く。このグループは、放浪民族のような感じです。

シャローネ:マルティーナと私はここで、写真で対話を表現する「DAYING」というプロジェクトの一部を展示しています。2人でこのプロジェクトを始めてから2年目です。もちろん2人とも物事を異なる視点で見るので、常に説明しあいながら進めていきます。1日中一緒に同じことをして、二人の考え方や、物の見方を見せあうのです。このやり方を、たまたま訪れることになったブエノスアイレスでもやってみたかった。私たちの訪れる場所を良く知る人と話をすると、とても興味深いものが見えてきます。その土地に住む人達が、私たちの見る物をどのように見て、考えているのかを知るのはとてもおもしろいですし、逆に、その土地の人にとっても、住み慣れた土地を全く新しい視点から見るのがおもしろいのだと思います。

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