KRV KURVA
PEOPLEText: Simone Biffi
何か新しい物を買おうかと、リスボンのショッピングストリートをぶらぶら歩いていたとき、ふとベネトンストアの中にあるファブリカ・フィチャーズ・ストアで何か面白いものはないかと思い、立ち寄ってみた。中には、最近観に行った展覧会でもすでに見かけたいた、「あるもの」を発見した。そこで今回は、その「あるもの」とクリエイターを紹介しようと思う。
「LA.GA」は、身につけるバッグ。身にまとうと、あなたの身体の一部となりシルエットを変えてくれる。身体にフィットするバッグという新しい考え方。そのバッグはダイナミックに形やテクスチャーを変え、あなたのことなんかそっちのけで、何か得体の知れない姿をつくりだす。つい、身の回りにある物は何でも着て良いのかもしれないとまで思わされてしまう。布はもちろん、建物、車、家具など私たちが身に纏っているものは至るところに沢山ある。それが、KRV KURVAの考え方。
当初はたった200ほどしか作っていなかったそうですが、急速に注文が増えてきているそうですね。その理由はどこにあると思いますか?そしてこれからどうなっていくと思いますか?
シンプルさです。その製品のアイディアは、「日常の衣服として想像のできない、新しいカタチの身体にフィットするもの」。他に何か挙げるとすれば、そのフォルム、ハイテク素材、信念です。現在は、もとの製品に様々な変化を加えたものも作っています。
ポルトガルや国外のデザイナーを招いて、製品に違った解釈を加えた「YOU TURN AT HER SERVICE」というタイトルの限定バージョンを拝見したことがあります。なぜそのようなバージョンを作ることになったのでしょうか? また、「TO LOVE IS NOT AN OPTION 2003」についても教えて頂けますか?
このプロジェクトは最初、「NO OPTION」という名前で始まりました。「LA.GA」のシルエットは、人によってその魅力の解釈の仕方が異なるからです。また白という色が、キャンバスとしてもとてもぴったりだったのだと思います。ある人は、自然と絵を描く手が動いたと聞ききました。とても嬉しいことです。さらに、デュポン社がこのプロジェクトのために印刷に適した素晴らしいクオリティのタイベックも提供してくれました。そのようにして、このプロジェクトはできあがりました。その後、22人の「LA.GA」を愛してくれる人達が、「TO LOVE IS NOT AN OPTION 2003」というテーマのもと、バッグにグラフィックをのせました。
国内外で沢山の賞を受賞し、そのファースト・エディションをきっかけに、ファブリカ・フィーチャーズ(ベネトン)でも扱われていますね。現在は、新しい展覧会を開催しているというのを耳にしましたが?
ファブリカ・フィーチャーズの新しいコレクション、「LA.GA MASAHIRO」は、ミラノ・サローネをはじめ、リスボン、ボローニャそして香港のファブリカ・フィーチャーズ、その他のデザインショップや美術館で発表しています。「TO LOVE IS NOT AN OPTION」のコレクションは現在、アテネのオッキ・ギャラリーで展示しており、その後ロンドンのガラ・フェルナンデス・ギャラリーで展示、またロンドンのマグマというショップで特別イベントを開催する予定です。
「LA.GA」の新しいコレクションを全て手掛けているのですか?またこのような製品が、今後のコンテンポラリー・カルチャーの未来につながっていくと思いますか?
「LA.GA」は、ふわふわしていて今にも飛んでいきそうなもので、とても身軽でどこへでも行ってしまいそうなので、いつも私達自身も驚かされています。水の中に石を放り投げて、水面にできる小さな波の行方を見ているのが好きです。KRV KURVAは産業と社会の間に、開かれた場を作るべく活動する実験室のような存在です。このような製品は、どのようにデザインが産業と社会の境界線にチャレンジできるかという一つの例で、私たちは希望を持って、魔法のような力を信じることが大切だということを教えてくれました。
現在は、あるファッション・コレクションの準備をしているところで、また新しい「ふわふわしていて今にも飛んでいきそうなもの」を生み出しているところです。私たちは、水面にできるその波を信じます。そしてそこに見えるものを信じます。
Text: Simone Biffi
Translation: Naoko Fukushi
Photos: Courtesy of Krv Kurva Design