アテハカ

PEOPLEText: Naoko Ikeno

昨年夏から立ち上がった、東芝と建築デザイン事務所インテンショナリーズによる家電プロジェクト「ATEHACA(アテハカ)」。いよいよ2002年春から、IH保温釜、電子レンジ、電気オーブン、コーヒーメーカー、保温ポットの五品目が発売される。「高貴である、上品な」という意味を持つ古語「あてはか」をプロジェクト名に冠し、食卓の空間に美しく存在し、内面的にも品格や美しさを備えた家電を創り出そうという取り組みだ。

「食器を想起するフォルム、料理が美味しそうに感じる色彩、家電が収納されていても美しいと感じることのできる食卓の風景」の創造をコンセプトに持つこのプロジェクトの製品は、スイッチ表示をかわいらしいピクトグラムにしたり、パッケージを家具としてリユースできるものにしつらえたりと、家電の新しい可能性に挑戦している。このプロジェクトの展覧会が、東京デザイナーズ・ウィークにともない、10月11日から31日までの間、バージョンギャラリー(原宿)で行われた。そこで、このプロジェクトでプロデュース/コンセプトワーク/プロダクトデザインを担当したインテンショナリーズの代表者鄭秀和さんにお話を伺った。

このプロジェクトは、どのようにして立ち上げられたのですか?

東芝さんの若い社員さんから、会社を説得して欲しいというオファーがあったのです。初めは、彼の個人的な思いだったわけですが、それをサポートする上司の方がいらして。そこで、何か新しい家電を作りたいということになったそうです。たまたま、彼らがインテンショナリーズの活動に興味があったようで、声をかけてくれたというのが最初です。僕自身としても、家電を含めて生活空間の全てをデザインしたいという希望がありました。住宅やインテリア、家具、そしてもちろん家電などこだわりなくやっていきたいと思っていたのですが、どうしても現在はいろいろと細分化されてしまっているので、建築をやっている人間が、プロダクト、それもメーカーの家電なんて、なかなかやれない状況なのです。去年から、いろいろと考えを拡大していって、具体的にこのプロジェクトをどうするかということを決めて、最終的に企画書を提出したのは今年の春です。

家電の機能とデザインの両方を追求する試みということで、苦労したことはありますか?

これまで行ってきた建築やインテリアも全部、機能とデザインと両立してやってきているので、そういう意味では今までと同じように考えることができました。ただ、家電の場合、全然ルールが違いますね。建築の場合にも、雨仕舞の問題があったりと、ルールがあるのですが、それを家電に置き換えて考えても、日常使う物なのでデザインだけでもだめでしょう?家電に使う素材は型を作って抜くので、テーパーがかかっていないといけないんですよ。それに、みんなが使う物なので、赤ちゃんにも優しくなければいけないし、年配の方が見ても美しく感じる物でなくてはいけないし、いろいろあります。法的な問題もありますし。あとは、熱に強いとか弱いとか、油汚れがついた時にとれるとかとれないとか。例えば、今回本当はコードをスケルトンにしたいというイメージがあったのですが、熱に強いスケルトンのコードというのは、無いわけです。それから、例えばコードをつけている所も2万回か、そのくらい振ってみても壊れないように、本体の方の曲線を作ったり。このポットのコードがついているところも、出っ張っていますけど、僕は本当はまっすぐストンとできればいいなと思ったのです。でも、やっぱり出っ張っていないと抜けない。こういうことが、デザイン上の制約かつ、難しさかつ、面白さですね。

これから、他の家電に広めていく予定はありますか?

もちろん、やっていきたいとは思っています。ただ、まずこのプロジェクトで成功してから、ということですが。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
ラ・フェリス
MoMA STORE