ソル・ルウィット展「セブン・ウォール・ドローイングス」
HAPPENINGText: Sara Överengen
『偉大なる芸術とは、見つけにくく、愛し易い。』これはストックホルムで最も信頼されるギャラリーのひとつ、マガシン 3のスローガンである。なるほど、確かに的を得ている。郊外の工業地域に位置するこのギャラリーは、フィンランド行きのフェリー乗り場に近接しており、このよく知られたギャラリーがあるとは思えない周辺環境のため道を間違ったかと思ってしまうほど。しかし一度足を踏み入れれば、必ず満足するだろう。2010年6月まで、アメリカ人アーティスト、ソル・ルウィットの「セブン・ウォール・ドローイングス」が開かれている。彼のウォール・ドローイングに関する個展では、スカンジナビア地域で史上最大のものである。
“Wall Drawing #51”, Installation at Magasin 3 Stockholm Konsthall, 2009. Courtesy Estate of Sol LeWitt
2007年に死去したルウィットは、60年代後半から70年代初頭にかけて、ミニマル・アートとコンセプチュアル・アートの先駆者であった。1968年に制作された彼の初めてのウォール・ドローイングは、黒鉛で描いた水平線、垂直線、対角線のみで構成され、そのコンセプトは彼の創作人生を通して貫かれた。彼の作品は幾何学的な形、色の中に想像しうる限りの線を追求し、建築学的なエレメントとも深く交わっている。今回マガシン 3が掲げたテーマは描線である。「セブン・ウォール・ドローイングス」では、鉛筆や様々なインクで描かれた7つの大規模な作品を展示している。
“Wall Drawing #123”, 1972. Installation at Magasin 3 Stockholm Konsthall, 2009. Photo: Linda Dobke. Courtesy Addison Gallery of American Art, Philips Academy, Andover, Massachusetts.
作品は6週間をかけて、14人のアーティストや美術学生の手によって直接ギャラリーの壁に描かれた。これら全てのドローイングはルウィットの残した記述や口頭記録に基づいて制作されている。彼はここではコンポーザーであり、アシスタント達がまるでオーケストラのように、彼の指示によって作業を実行するのだ。これによりルウィットの作品はサイトスペシフィック・アート(特定の場所に存在するために制作された作品)へと解釈される。まるで楽譜を基に演奏するオーケストラが毎回すこしずつその音色を変えていくように。指示のひとつには「黒い壁に、鉛筆の線は限界の密度まで描かれる」とある。これを基にした「ウォール・ドローイング715番」は、黒く大きな壁にもつれあった鉛筆の線が印象的な作品である。
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