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ワンナイン

PEOPLEText: Mayumi Kaneko

新年第1号で、通算50号目のSHIFTを記念するカバーデザインを制作してくれたのは、マット・オーエンス率いるニューメディア・エージェンシー、ワンナイン

マット・オーエンス、ウォーレン・コービット、リー・ミセンハイマーの3人からなるワンナイン。ナイキや、ヒューレッド・パッカード、ナショナル・ジオ・グラフィック、レイガンなど多くのクライアントワークを手掛ける、ニューヨークを代表するデザイン・スタジオの一つだが、常に斬新なアプローチでニューメディア・デザイン・シーンを押し進めている。

デザインに興味を持つようになったきっかけは?

マット・オーエンス:もともと音楽が好きで、高校、大学時代にレコードジャケットやフライヤーを制作していたのがきっかけです。ジェイソン・ファーレル、ジェフ・ネルソン、クリス・バルドのデザインワークには、すごくインスピレーションを受けました。大学に入ってデザインクラスを選択してからも、それをやり続けました。卒業後は大学院に入り、アイディアを通しての制作ということについて多くの事を学びました。今も音楽には興味があり、自分ができる限り音楽やシーンに貢献して行きたいと思っています。

ウォーレン・コービット:全ては高校時代に始まったのだと思います。高校時代に学校新聞の編集をやっていて、僕の役割は、各号のレイアウトをすることでした。80年代半ばの「ニューウェーブ」のとりこになって、ニュー・オーダーのレコードジャケットと雑誌のインタビューページをベッドルームの壁に貼っていました。その後いろいろな経過を経て、最終的に常に興味があったことをやるようになりました。

リー・ミセンハイマー:かなり早い段階で、イラストレーションの道に進むことに決めました。学校では、ファインアート系のものにグラフィックデザインの要素を少し加えたものをやっていたのですが、デザインは僕にとって、自分のアートワークを発表する雑誌やフライヤーを作るひとつの手段でもありました。大学の終わり頃にインタラクティブデザインに興味を持つようになって、主にディレクターを使うようになり、卒業後も仕事としてインタアクティブデザインを続けました。幸運にもウェブの波が起こって、それに応じて自分のインタラクティブデザインを変化させていきました。パーソナルサイト、デストロイ・ロックシティでは、クリエイティブ作品やデザイン、イラストレーションを制作しています。このアウトプットによって、ここ数年自分がビジュアルコミュニケーションという主題にどのようにアプローチすべきかを考える上で、大きな手助けとなっています。

ワンナインは、3人のフルタイムデザイナーとその他数人のスタッフがいますが、小規模なスタジオのメンバーとして、オンライン/オフラインともに現在のデザインの状況についてどう思いますか?

マット:デザインは今、面白い場にあります。デザイン分野のパロディーをやっている「ONE」などといった新しいデザイン雑誌もありますが、サブメソッドキオケンチョッピング・ブロックなど、デザインを新しいレベルへ押し上げようとしているオンラインデザイナーや、ブロードキャストデザイナーが数多くいます。基礎としてのデザインは、いかなるメディアにおいても良い作品を制作する上で根本的に重要なことだと思います。

ウォーレン:今日、至る所でデザインを目にすることができます。僕らと同じ世代の人達は、視覚的により洗練されていて、前世代よりも様々なことを早くから自覚しています。つまり、僕らの世代は、より早い時期にビデオゲームやテレビ、インターネットから視覚的なインプットを得ることができるのです。オンライン/オフライン問わず、遍在する数多くの作品にどれだけの思想が込められているのか分かりませんが、とても優れたビジュアル制作者達が沢山います。残念ながら、僕自身それが何を意味するのか分からないし、彼等が自分自身何を伝えようとしているのか自覚があるのかも定かではありません。

リー:普段あまり「デザインの状況」について考えることがないので、良く分かりません。オンラインデザインに関して言えば、クールなビジュアルをあちこちで見ることができるようですが、と同時に、おそらくアイディアが欠けていると思います。スキルは素晴らしいものがあるので、今後の可能性に期待したいです。

どのような教育を受けましたか?デザインにおいて、大学の学位を得ることが重要だと思いますか?インターネットの出現によって、デザインの教育は変わったと思いますか?

マット:僕自身、大学でデザインの学位を取得しています。デザインの歴史や系統を知ることは、デザインが何に由来するのかをしっかりと把握するという面で非常に重要です。テクノロジーを学ぶためには、教育的な背景はあまり重要ではないかもしれません。僕は、学校にいた時よりもむしろ卒業してからの方が多くのことを学びました。今言えることは、自分で物事を率先してやり、自分自身で学んで行くことが重要なのだということ。デザインの基礎は常に重要になってくるとは思いますが。

ウォーレン:バッサー大学で政治論のBAを取得しています。ポスト構造主義と性的アイデンティティ学について広く学び、フーコーやヘーゲルの理論を勉強しました。1997年に、クランブルックアカデミーでスコット・マケラ教授のもと、グラフィックデザインのMFAを取得すべく勉強を開始しました。僕は必ずしも、良いグラフィックデザイナーになるためには大学の学位が必要不可欠だとは思いませんが、あえて言うなら、考えたり問題を解決したりできるようになるということが必ずしも正しく、良いデザインにとって重要な最も好都合な方法ではないと思います。僕自身、大学時代にデザインを勉強しなかったのですが、その代わりに議論を組織立てたり、ある意味制約に捉われない考え方をする方法を学びました。大学に行くことが必要不可欠なことだとは思いませんが、観念的な探求という面で共通の目的を持ったコミュニティーの一員になることによって、それを楽しく容易にすることができます。たまに、クランブルックの卒業生を召集して「クラブメッド・オブ・グラフィックデザイン」を開催するのですが、その理由は、そこでは自分自身のデザインとコミュニケーションとの関係のみにフォーカスすることができる贅沢な場だからです。クライアントや日々の仕事から解放されることによって、探求に没頭することができるのです。

リー:東キャロライナ・アート大学でイラストレーションのBFAを取得しました。僕も、大学の学位が必ずしも必要だとは思いませんが、それが厳しいカリキュラムによるものであれ物事を始動させることのできる共通のクリエイティブな存在であれ、経験を通して新しいアイディアを思い付くきっかけとなり、間違いなく「アイディア」を創造する刺激になり得ると思います。

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