ワンナイン

PEOPLEText: Mayumi Kaneko

小規模なデザインスタジオで仕事をする上での良い点と悪い点を教えてください。多くのデザイナーが大/中規模のスタジオで仕事をしていますが、その点について何か言えることはありますか?

マット:様々なプロジェクトを手掛けることができる能力を持ちつつ、小規模なカンパニーで仕事をするのが好きですが、ネガティブな面で言えば、一人で3人分の仕事をしなければならないのが大変です。プロジェクトの管理、デザイン、アートディレクションを一人で同時にやらなければならないのですから。ワンナインを始める前に、かなり大きなエージェンシーで仕事をしていたのですが、そこでプロジェクト管理とクライアントインターフェイスについて多くのことを学びました。その経験がなかったら、会社を始めるなんてことはできなかったと思います。

ウォーレン:ワンナインを結成した主な理由のひとつは、様々なタイプのプロジェクトを手掛けると同時にデザイナーとして自分自身を発展させていくためです。スタジオとして仕事をすることによって、大規模なプロジェクトにも取り組むことができます。もちろん自分達が望みさえすれば、小規模なものも可能です。社員もそんなにいないので、大きな組織よりは金銭的なこと以外でクオリティーを維持することができるのです。と同時に、スタジオでは一人で何役もこなさなくてはなりません。また、常にクライアントワークと個人的なプロジェクト両方が必要する注意と時間を確実に得ることができるようにしなければなりません。難しいことではありますが、それが僕達が求めるスタジオのあり方なのです。バランスを取るのはかなり厳しいです。

リー:デザインとアイディアを実行するプロセスの全側面に関わって行きたいです。大規模なスタジオでは、比較的簡単に仕事の役割を与えられます。仕事の目的もかなり特定され、一日中PSDファイルを作っているだけのデザイナーもいます。ある人にとってはそれが理想的なのかもしれませんが、僕はもっと変化のある役割をして行きたいです。

ワンナインのメンバーは、皆それぞれ個々のスタイルと能力を持っていますが、それが、スタジオとしてのプロジェクトの制作過程にどのような影響を与えていますか?

マット:それぞれが個々のプロジェクトをやっています。各プロジェクトが、それぞれにとって個人的でクリエイティブなアウトレットとなっていて、デザインとものづくりへの愛情とともにビジュアル/インタラクティブカルチャーへ貢献するものとなっています。メンバーは皆共同で作業し、と同時に個々でも作業しています。必然的に、メンバーの一人がプロジェクトを引っ張るリーダーになるわけですが、僕が思うに、リーには僕らと一緒にうまく作業する才能があると思います。ウォーレンと僕は、いくらか個人的な考え方になってしまう時もありますが。スタジオ内では、それぞれが自分の仕事をするのは大歓迎です。中には、何年間も一人で作品制作をしてきたメンバーもいるので、そのための場を与えてあげることは、意味のあることです。また、結果としてそれがクライアントワークや実験的な可能性にも活気を与えることになります。個人的な制作をやらなければ、仕事が面白いかそうでないかに関わらず、仕事はただの仕事になってしまうのだと思います。

ウォーレン:僕達は皆、デザインに対してはっきりと自分の意見を持ったアプローチで取り組んでいます。皆頑固なので大変ですが、それを曲げる気はありません。何かを守ろうとした時、それには何か意味があるはずで、そうした理由が必ずあるはずです。うまくやる秘訣は、クライアントやプロジェクトのニーズに対して、「これは好き」「あれは好きじゃない」といった主観的な意見を持つことだと思います。また、全てのプロジェクトには、それを引っ張るクリエイティブリーダーが必要ですが、最終的な責任はそのリーダーにあります。様々なコラボレーションプロジェクトで仕事をしてきましたが、少しの苦労があった時にのみ成功は生まれるのです。トーマス・ジェファーソンがかつて言った言葉にも、「人々の幸せが、時に巻き起こる大嵐や少々の流血によって守られているのだとしたら、そこからは貴重な収穫があるであろう」というのがあります。

リー:スタジオ以外では、皆それぞれ自分の作品を制作していて、間違いなくそれはプラスになっています。高いレベルでクリエイティブ性を注ぎ込み続けています。ワンナイン以外で僕達がそれぞれ探求している実験が、ビジュアル的インタラクティブ的にクライアントワークに取り組む新しい方法へと繋がります。また、それによって共同で作業がしやすくなり、楽しく仕事ができるようになります。「君が使ってるナビゲーションかっこいいね。それをこのプロジェクトに応用してみたらどうだろう?」といった感じで、一緒に作業をする上での「道具」をより多く与えてくれるのです。すごくインスピレーションを得ることができるプロセスです。

自分はグラフィックデザイナーだと思いますか?それとも、ウェブデザイナー?また、デザイナーとは何かという定義は変わってきたと思いますか?

マット:僕は自分を、トラディショナル、デジタル両方の背景を持ったデザイナーだと思っています。グラフィックデザイナーであれ、ウェブデザイナーであれ、ブロードキャストデザイナーであれ、限定してしまうと限界があると思います。そういったもの全てを手掛けることができるようになりたいです。スタジオとして個人として、ビジュアルコミュニケーションに関する全エリアで良い仕事をして行きたいです。

ウォーレン:アイディアや思想を表現する手段としてビジュアルコミュニケーションを使っている限り、僕は自分をグラフィックデザイナーだと思っています。また、デザイナーの定義は、デザイナーが「きれいな」ものを作るためだけにデザインを使っているのではないことを認めつつある大衆の認識の中で変わってきていると思います。僕達は、物事を意味のあるものにしているのです。

リー:もしどうしても決めなくてはならないとしたら、デザイナーと呼ばれても構いませんが、ワンナインではクライアントワークのデザインは、そんなに制作していません。インタラクティブデザインとグラフィックデザインの中間をやっているような感じです。大規模なアイディアのプロジェクトから些細なものまで、プロジェクトをデザインし、それを機能的にするのが好きです。ただ、ものを作るのが好きなだけなのです。

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