グラフィティ/ストリートアート展
都会の扉は世界を見渡しても最も頻繁にストリート/グラフィティ・アーティストに好まれているキャンバスであろう。そのフレームは神出鬼没のアーティストに束の間の隠れ家を与え、その表面は外の世界に向けて公文書さながらに公布される。この扉が今回のテーマとなった画期的なグループ展「グレート・アウト・ドアーズ」が、ルナ・パークとビリー・キッドのキュレーションの基、2009年5月2日から29日までウィリアムズバーグのアートブレイク・ギャラリーで開催されている。最大で30もの扉が今日ストリートで活躍するアーティストによって再着服され、彼らの路上で磨き上げられた技がペイント、ステンシル、ウィートペイストといった形となってそこに表現されている。
ストリート/グラフィティ・アーティストは、大都市に抱かれて活動することを強く好み、言うまでもなく扉をはじめとした屋外のファサードに注意深くその可能性を探る。以下の参加アーティストのそれぞれにこれまで公共物に手を加えた経験を持つ:ビリー・キッド、ブランコ、ブロークン・クロウ、ビルドモア、ケイク、C-ダメージ、ケルソ&LA2、サーンクリス (RWK)、ディーカー、デストロイ&リビルド、デュード・カンパニー、フェラル、ゴールデンスタッシュ、イミネント・ディザスター、インフィニティ、ケンジ&ダナ・ウルフ、マット・サイレン、モーガン・トーマス、ペル・アナ・アナ・ペル、プラズマ・スラッグス、ヴェン (RWK)、ロイス・ベノン、スカルフォン、スティックマン, ウィンドウズー、ヤスィー・ゴールディ。
各々のアーティストにはこの展示会に合わせて中古の扉に取り組む課題が与えられた。その扉は道路脇から救い出されたもの、ゴミ置き場から持ち出されたもの、郊外の農家から持ち込まれたもの等様々。木製から金属製、とても軽量なものから不条理に重いものといった多種多様の扉が調達された。披露されているアーティストのテクニックも多岐に渡る。ブランコ、ブロークン・クロウ、デュード・カンパニーは美しいステンシル作品を届けてくれた。イミネント・ディザスターとフェラルのカットアウト技術は皆に感銘を与える。ボストンに拠点を置くケンジとダナ・ウルフ、またニューヨーカーであるケルソとLA2、それぞれのコラボレーション作品は注目に値するだろう。ロボッツ・ウィル・キルのメンバーであるヴェンとクリスは2人とも郵便受けを巧みに利用した郵便をテーマに取り組んだ。ディーカーとロイス・ベノンは自らの心に棲むモンスターを表現している。
グラフィティ/ストリートアートは時に非難される –当然のことながら– ギャラリー形式のキャンパス上の作品として上手く変換され難い為である。路上にあった沢山の輝きがその背景と共に失われてしまう – 無論、ストリートの美術作品に付随する対話空間をそのまま異なった場所に再現することは不可能に近い。しかしながら、今回は屋外の扉を屋内に持ち込みながらも尚、そのメッセージの意味をいくらかは保つことができたであろう。まるで動物園のように、扉を屋内に持ち込むことで、鑑賞者が今後路上で出くわすであろう扉に今まで以上に魅力を感じる、そんなインスピレーションを与えることができれば幸いである。
Great Out Doors
キュレーター: Luna Park and Billi Kid
会期:2009年5月2日(土)〜29日(金)
時間:13:00〜19:00
会場:Artbreak Gallery
住所:195 Grand Street, Williamsburg, Brooklyn, New York
https://www.artbreakgallery.com
Text: Katherine Lorimer
Translation: Yoshitaka Futakawa
Photos: Katherine Lorimer