横尾忠則 連画の河
HAPPENINGText: Alma Reyes
《連画の河を描く》(2023年)で横尾は、本展の起点となった先のイメージから、「鉄橋と人々」へとモチーフを増幅させ、筏、アーチ、汽車などの要素を加えて再構築し、時間を超越した複雑な変容を伴いながら同じ風景を反復し、様々な人々の集合記念写真をテーマとした絵画の連作を描いた。
横尾忠則《連画の河を描く》2023年 作家蔵
横尾はさらに、《メキシカンと農夫》(2024年)や《連画の河、タヒチに》(2024年)において、同級生たちがまったく別の存在に変容し、過去の記憶を蘇らせるという時間の風を外挿する。しかし、水という要素だけは常に残っている。横尾にとって、水は形を持たないものとして存在するが、他の無限の形を自由にとることができる。人間は母胎から生まれ、最後には 「生と死を繰り返す輪廻の海」に戻る。
横尾忠則《連画の河、タヒチに》2024年 作家蔵
興味深いのは、《郷愁》(2024年)、《The End of Life Is Moral》(2024年)、《点ではなく丸(夜)》(2024年)、《ボッスの壺》(2024年)の4作品だ。すべての作品には壺が描かれ、死者の遺灰が生命に生まれ変わる寓意を象徴しているようだ。「The End of Life Is Moral(人生の終わりは道徳的なもの)」では、黒い骨壷から謎めいた緑色の男が顔を出し、長い棒を下方に伸ばしている。《郷愁》では、人物は後ろ向きで座っており、おそらく骨壷の中にいる。横尾自身は、自分の絵を自己反省的なものだと考えていた。横尾は『連画の河は私が描いた一連の絵ではなく、絵に描かれた私なのかもしれない。』と語っている。
横尾忠則《ボッスの壺》2024年 作家蔵
「連歌の河」シリーズを含む、横尾の作品を最も魅力的にしているのは、世界各地の記憶や歴史から引き出された複眼的なイメージを、見事なモチーフ、色彩、形態、技法で絡め取り、コラージュする狡猾さである。その結果、見る者は絵の中に深く入り込み、作家の心の中にあるノスタルジーと同様の体験をすることになる。
また、ショーケースには、雑誌や新聞から切り取った写真を貼り付けたスクラップブックが収められており、アトリエでの横尾の映像とともに、過去の回想だけでなく、時とともに変化する自分自身を映し出す窓として観客を誘う。
横尾忠則 連画の河
会期:2025年4月26日(土)〜6月22日(日)
開館時間:10:00〜18:00(月曜日休館)
会場:世田谷美術館
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
TEL:03-3415-6011
https://www.setagayaartmuseum.or.jp
Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
