「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」展
HAPPENINGText: Alma Reyes
坂本は、2017年にリリースされたアルバム『async』をきっかけに、同アルバムを「立体的に聴かせる」ことを意図し、Zakkubalan、アピチャッポン・ウィーラセタクン、高谷史郎らとインスタレーション作品を制作した。音楽を空間に立体的に設置する「設置音楽」のコンセプトに沿って、アルバム『async』の楽曲を使ったいくつかのインスタレーション作品を制作している坂本と高谷。坂本龍一+高谷史郎《async–immersion tokyo》(2024年)は、坂本の没後にこれまでの「async」シリーズを深化させた形で「AMBIENT KYOTO 2023」で発表した大型インスタレーションを東京都現代美術館の展示空間にあわせて再構成した新作となっている。
坂本龍一+高谷史郎《async–immersion tokyo》2024年、「坂本龍一|音を視る 時を聴く」東京都現代美術館、2024年 Photo: Takeshi Asano
© 2024 KAB Inc.
2007年に発表された坂本龍一+高谷史郎の代表作《LIFE–fluid, invisible, inaudible…》(2007年)は、坂本が1999年に発表したオペラ『LIFE』(1999年)元に再構築された音と映像に包まれた空間に、頭上に浮かんだ9つの水槽が明滅する中を、庭を散策するようにしばし佇みながら、ゆっくりと歩み、従来のリニアな体験とは異なる時空間の拡がりと流れを体感できるインスタレーション作品。来場者は、まるで時間と空間が絡み合ったカプセルの中に沈められたような、浮遊する庭園の超現実的な存在を感じながらさまよう。
坂本龍一+高谷史郎《LIFE–fluid, invisible, inaudible…》2007年、「坂本龍一|音を視る 時を聴く」東京都現代美術館、2024年 Photo: Takeshi Asano
© 2024 KAB Inc.
展覧会の最後を飾る作品は、初公開となる坂本龍一×岩井俊雄《Music Plays Images X Images Play Music》(1996-1997/2024年)。本作は、1997年にオーストリアのリンツで開催されたアルス・エレクトロニカでインタラクティブアート部門でグランプリを受賞した坂本が演奏した際の映像とMIDIデータを用いて、岩井の革新的なプログラミング手法によって再構築したマルチメディアインスタレーション。
坂本龍一×岩井俊雄《Music Plays Images X Images Play Music》1996–1997/2024年、「坂本龍一|音を視る 時を聴く」東京都現代美術館、2024年
Photo: Ryuichi Maruo © 2024 KAB Inc.
グランドピアノは坂本自身が愛用していたもので、大きなガラスに映し出された坂本の演奏する後ろ姿とピアノの位置が正確に一致し、映像に合わせてピアノが自動演奏される。ピアノから投影される光の映像は、演奏データをもとにリアルタイムで生成され、その角度、長さ、明るさは、演奏される一音一音に応じて変化する。『シェルタリング・スカイ』のテーマや『Parolibre』が“生”演奏され、来場者は感動に包まれる。
まるでその場にいるかのような坂本の姿は、世界で崇拝される音楽的・芸術的天才の一人の計り知れない損失に対する悲しみを帯びた、痛烈でメランコリックなものであったことは確かだ。この展覧会は、彼の貴重な遺産を称える完璧な賛辞として機能している。
坂本龍一 | 音を視る 時を聴く
会期:2024年12月21日(土)~2025年3月30日(日)
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
*3月7日、14日、21日、28日、29日は20:00まで
休館日:月曜日(2月24日は開館)、2月25日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.mot-art-museum.jp
Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
Photos: Courtesy of the Museum of Contemporary Art Tokyo © 2024 KAB Inc.
